2001 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞における新奇β-1,4-ガラクトース転移酵素V遺伝子の発現調節機構の解明
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12771428
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
佐藤 武史 (財)東京都老人総合研究所, 生体情報部門, 研究員 (30291131)
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Keywords | β-1,4-ガラクトース転移酵素 V / 癌細胞 / プロモーター領域 / 転写因子 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画に基づいて研究を行い、以下の新しい知見が得られた。 1)昨年度に単離したゲノムDNAからβ-1,4-GalT V遺伝子の5'上流域(2.2kb)を調製し、これをホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に繋いでプラスミドを作製した。このプラスミドを種々のヒト癌細胞(A549,SW480,'K562,Molt-4)に導入,発現させ、ルシフェラーゼ活性を測定することでβ-1,4-GalT V遺伝子5'上流域のプロモーター活性を評価した。その結果、β-1,4-GalT Vプロモーターを含むプラスミドを細胞に導入すると、対照に比べて6-200倍高い活性が見られたので、単離したDNA断片がプロモーター活性を担っていると考えられた。さらに、β-1,4-GalT Vプロモーターから転写因子AP-1,c-Myb, Etsファミリーが結合する部位を除くと、SW480においてプロモーター活性の低下が見られた。 2)β-1,4-GalT Vプロモーターには、srcチロシンキナーゼによって活性化される転写因子と結合する領域が存在することから、srcチロシンキナーゼの阻害剤であるherbimycin Aを用いて、ヒト肺癌細胞A549におけるβ-1,4-GalT V遺伝子の発現動態及び糖鎖構造の変化の有無を解析した。薬剤で処理した細胞では、未処理の細胞に比べて抗リン酸化チロシン抗体PY-20と反応するタンパク質の数が減少し、β-1,4-GalT V遺伝子の発現も1/3に低下していた。一方、薬剤で処理した細胞ではβ-1,4-ガラクトース残基と結合するRCA-Iや高分岐糖鎖を認識するL-PHAとの反応性が、幾つかの糖タンパク質糖鎖で減少していた。 以上の結果から、herbimycin Aを用いてβ-1,4-GalT V遺伝子の発現を抑制し、癌細胞の形質発現に関る糖鎖構造を制御できると考えられる。
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