2000 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門・血液脳脊髄液関門における能動的薬物排出トランスポータの機能解析:有機アニオントランスポーター(oatpおよびoatファミリー)の役割
Project/Area Number |
12771459
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠原 洋之 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (00302612)
|
Keywords | 血液脳関門 / 血液脳脊髄液関門 / 有機アニオントランスポーター / 排出輸送 / 寄与率 |
Research Abstract |
血液脳関門・血液脳脊髄液関門に発現しているトランスポーターの発遺伝子現系の構築と機能解析について、いくつかの研究成果が得られた。我々はPeter J.Meier、遠藤仁らと協力し、ラット有機アニオントランスポーター(organic anion transporting polypeptide;Oatp、ならびにorganic anion transporter;Oat)の遺伝子発現系を、ブタ近位尿細管由来細胞(LLC-PK1)を用いて作成した。この遺伝子発現系を用いて、in vitro輸送阻害実験を行い、10種以上の阻害剤の阻害定数を評価した。阻害定数に基づくと、taurochoalteがOatp(Oatp1,Oatp2)に対して、p-aminohippurate(PAH)がOat(Oat1,Oat3)に対して選択的であった。さらに、digoxinがOatp2に対して特異的であり、benzylpenicillinやcimetidineはOat3に対する選択性が高かった。これらの薬物を阻害剤として用いることで、膜透過過程に占める有機アニオントランスポーターの寄与率を評価することが可能である。モデル薬物として選択したestradiol 17β glucuroide(E217βG)の血液脳関門を介した排出に占める各有機アニオントランスポーターの寄与率評価を試みた。脳内投与後、E217βGは速やかに消失する。この消失はdigoxinにより40%程度阻害され、PAHによっても20%ほど阻害されたことから、Oatp2、Oat(Oat1あるいはOat3)の寄与率は40%、20%と推測される。本研究により、有機アニオントランスポーターの寄与率を定量的に評価する阻害剤の組み合わせが明らかとなったとともに、Oatp2ならびにoatにより60%しか説明できないことから、血液脳関門において他のトランスポーターの関与も示唆されている。これら血液脳関門における有機アニオントランスポーターの寄与率に関する情報を蓄積することで、薬物の脳内動態の個人間変動において重要なトランスポーターを見出し、発現量あるいは遺伝的多型との情報と統合することで、ヒトにおける脳内動態の予測が可能になるものと考えている。
|