2001 Fiscal Year Annual Research Report
病態時における薬物腎排泄の変動とその分子機構に基づく科学的投与設計の構築
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12771462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 育子 京都大学, 医学研究科, 助手 (50273446)
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Keywords | 薬物トランスポータ / 腎排泄 / 有機アニオン / 有機カチオン / 薬物動態 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
生体に投与されたイオン性薬物の多くは、腎臓において尿細管分泌を受け尿中に排泄されることが知られているが、腎障害時におけるこれら薬物の腎排泄変化と薬物トランスポータの発現変動に関する情報は少ない。本研究課題では、平成12年度にシスプラチン惹起腎障害モデルラットを用いた検討を行い、このモデルにおいては有機アニオンの腎皮質切片への取り込みは有意に低下するものの、有機カチオンの取り込みは有意に変化していないこと、さらに側底膜有機アニオントランスポータrOAT1及び有機カチオントランスポータrOCT2の発現変動を伴わないことが判明した。本年度は、既報に準じ5%オキソン酸と2.5%尿酸の混合飼料を10日間与えることによって高尿酸血症モデルラットを作成し検討したところ、糸球体濾過速度の減少と共に、有機アニオンメトトレキサートや有機カチオンシメチジン腎クリアランスの減少が観察された。さらに腎切片へのこれら薬物の取り込みは減少したことから、血管側側底膜を介した輸送活性の低下が示唆された。ラット腎粗膜画分を調製し、側定膜有機アニオントランスポータrOAT1、rOAT3並びに有機カチオントランスポータrOCT1、rOCT2特異抗体を用いてウェスタンプロッティングを行ったところ、rOCT1蛋白量は変動していないものの、rOAT1、rOAT3、rOCT2蛋白量の減少が観察された。さらに、ラット腎total RNAを調製し、rOAT1、rOAT3、rOCT2の特異的プローブを用いノーザンブロッティングを行ったところ、rOAT1、rOCT2 mRNA発現量の有意な低下が認められた。従って、高尿酸血症モデルラットの腎側底膜における有機アニオン及び有機カチオン輸送活性の低下に、rOAT1、rOAT3及びrOCT2の特異的な発現量低下が寄与していることが示唆された。 以上の結果、腎障害時におけるイオン性薬物の腎排泄への影響は多様であるものの、一部は薬物トランスポータの特異的な発現変動で説明できると考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Yamaguchi H: "Pharmacokinetic role of P-glycoprotein in oral bioavailability and intestinal secretion of grepafloxacin in vivo"J. Pharmacol. Exp. Ther.. 300・3. 1063-1069 (2002)
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[Publications] Okabe H: "Evaluation of increased bioavailability of tacrolimus in rats with experimental renal dysfunction"J. Pharm. Pharmacol.. 54・1. 65-70 (2002)
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[Publications] Yano I: "The need for mixed-effects modeling with population dichotomous data"J. Pharmacokinet. Pharmacodyn.. 28・4. 389-412 (2001)
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[Publications] Yamaguchi H: "Transport characteristics of grepafloxacin and levofloxacin in the human intestinal cell line Caco-2"Eur. J. Pharmacol.. 431・3. 297-303 (2001)
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[Publications] Fukatsu S: "Population pharmacokinetics of tacrolimus in adult recipients receiving living-donor liver transplantation"Eur. J. Clin. Pharmacol.. 57・6-7. 479-484 (2001)