Research Abstract |
近年,我が国においては外国人の入国・在留者が急増しており,医療の現場においても外国人に対する関心が高まっきている。医療現場では,文化の違いや言葉の違いによるコミュニケーションの問題に加え,高騰する医療費の問題など社会的課題が大きくクローズアップされてきているのが現状であろう。そこで本研究では,「各医療機関における外国人患者への対応」「医療現場における看護の留意点・コミュニケーションの方法」「文化の違いに対する認識と対応」「医療体制の違いの認識と対応」を明らかにすることを目的として,研究をすすめている。本年度は,現状に関する資料収集が主であったが,今後は「外国人に対する看護に携わっている看護側の受け入れ状況」「外国人の看護における留意点」「文化の違いの認識」を明らかにすることを目的に,看護者への調査を基本とし,外国人の満足度に関してもインタビュー調査を加えていきたいと考えている。本年度の調査において明らかになったことは,以下の実状である。 (1)都道府県別外国人登録者数は,東京都,大阪府,愛知県などの大都市に多い。その内訳としては,東京都や神奈川県では,韓国・朝鮮および中国を中心に,他の国籍も万遍なく分布しているのに比べ,大阪府,京都府,兵庫県などでは韓国や朝鮮が,愛知県,静岡県,三重県などではブラジルが大きな割合を占めている。 (2)在日外国人に母国語で電話による医療相談を提供しているボランティア団体によると,東京地区では,ブラジル,ペルー,中国国籍の順に,また関西地区では,ペルー,アメリカ,オーストラリア国籍の順に問い合わせ件数が多くなっている。その相談内容は,「言葉の通じる医療機関の紹介」が圧倒的に多く,その他には「病気・医療に関する質問」,「言葉の問題」,「医療・福祉・保険制度」に関する問い合わせとなっている。 (3)医療者側の意見としては,外国人患者の受け入れに対し困難と感じる理由は,「言葉の問題」「保健・支払い能力の問題」「インフォームドコンセントの問題」「診療時間がかかる」「医療システムの違い」などが挙げられていた。
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