2000 Fiscal Year Annual Research Report
看護教育における遺伝医学カリキュラム導入に関する研究
Project/Area Number |
12771514
|
Research Institution | Keio Junior College of Nursing |
Principal Investigator |
藤井 千枝子 慶應義塾看護短期大学, 専任講師 (60320818)
|
Keywords | 遺伝看護学 / 看護教育 / 患者のニード / 遺伝カウンセリング |
Research Abstract |
本年度は、遺伝医学セミナー(日本人類遺伝学会主催)と、米国で開催されたNational Society of Genetic Counselorの教育カンファレンスに参加した。また、米国の遺伝看護に関する調査では、ボストン総合病院に勤める遺伝看護婦や遺伝看護学を専攻している看護婦にインタビューを行った。患者のニードに即した援助を分析するために、マーケテングやゲーム理論といった分野の講座に参加した。 遺伝医療といった新しい科学の進歩は、看護そのものの意義を見つめる機会となる。新しい治療法を確立していくためには、診療時の看護の確実性も高めていく必要がある。看護は、患者が安全に治療が受けることができるような援助をアセスメントするということには変わりがないが、このために分子レベルでの理解も必須となってきている。 長期間の療養生活への援助は、患者のもつ能力が発揮できるように環境を整えるといった看護の基本にも変わりがないが、日常生活に生じる問題は、家族も環境要因や遺伝要因を共有しており、いくつかの要素が複雑に絡み合ってくる。患者と家族の意思が対立することも考えられる。このためには、患者および家族への支援と生活支援や権利擁護に関する看護の専門性が問われてくる。また、遺伝子診断技術の進歩は、自己の将来の疾患予測が可能となることへの安否が問われている。遺伝子診断により、明らかにされた発病の可能性を抱きながら生活を行う人々に対して、生と死に関する心のケアも一層必要となる。 遺伝に関する最新の知見や臨床応用が活発に論議されるようになってきた。このような変化の中で今後の看護教育は、患者の日常生活に即した患者中心の教育を行うことに加えて、(1)遺伝医療に関する理解、(2)診療時の看護の確実性、(3)こころと生活支援、権利擁護に関する看護の専門性の追求により、新たな医療を支える質の高いケアを構築していかなければならない。このために次年度は、患者が遺伝看護に関して何を望んでいるのかという患者のニードに即した、遺伝看護教育を考察する。
|