2001 Fiscal Year Annual Research Report
製造技術と技術研修・OJTに着目した日本鉄鋼業の技術移転システム研究
Project/Area Number |
12780004
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
長谷川 伸 関西大学, 商学部, 専任講師 (60271855)
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Keywords | 鉄鋼業 / 技術移転 / 技術協力 / 技術研修 / 操業指導 / 日系ブラジル人 / 職業訓練 / ウジミナス |
Research Abstract |
文献サーベイ及び日本及びブラジルでのヒアリング調査によって得られた知見は以下の4点である。 第1に,技術移転の3つの媒体(ヒト・モノ・文書)は相互に随伴的であり,いずれかに何らかの障害が生じると技術移転が遅延・失敗する傾向があるが,ある程度相互に補完的である。 第2に,日本鉄鋼業における技術研修・操業指導は基本的にマンツーマンで行われ,相手と同等の職位にある者が研修担当者となる。技術研修では対象機械設備を操作させることは基本的になく,現地に戻ってからの操業指導下においても,初期においては操業指導者が後ろから手を回して指導対象者と一緒にハンドルを握る形をとる。 第3に,日本鉄鋼業における技術研修の制度化(研修担当者の専任化,詳細なカリキュラムの作成)は70年代に日本鉄鋼業がエンジニアリング事業を立ち上げた際に行われた。制度化されていくに連れて,鉄鋼業における技術研修の期間は,受入側・派遣側の効率化・コストダウンの要求に従って次第に短くなる傾向にある。 第4に,1950年代から60年代にかけて建設されたブラジルのウジミナスは,戦後初めての本格的な海外技術協力事例であり,その後の技術協力モデルとなった日本的技術移転システムの原点の一つである。ウジミナス建設にあたっては,様々な困難のもと,建設用資材や機械設備の到着遅延などのモノを通した技術移転の遅れ,図面などの技術文書の未着などの文書を通した技術移転の遅れを,ヒトを通した技術移転(技術研修・操業指導)で補うことにより克服した。そこには,ヒトを通した技術移転をより容易ならしめた日系ブラジル人社員の存在がある。
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