2000 Fiscal Year Annual Research Report
確率モデルに基づく立位時着力点動揺軌跡の数値解析と直立機能評価システムの開発
Project/Area Number |
12780011
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 秀幸 東京農工大学, 工学部, 助教授 (70231412)
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Keywords | 立位姿勢調節 / 足圧中心点動揺 / 視覚情報 / 自己回帰モデル / 成人健常者 / 体力科学 |
Research Abstract |
安静立位時における足圧中心点(以下,着力点)の動揺波形の時系列変化に着目し,工学の信号処理分野で用いられている数理モデルを応用して直立姿勢制御機能の新しい測定評価システムを開発することを目的として研究を行った.平成12年度は,着力点動揺計測システムと着力点動揺の時系列データ解析システムを作成した.着力点動揺解析システムにおいては,計測システムによってデジタル化されたデータを以下の手順で解析した. (1)直立姿勢制御系を閉ループ回路におけるフィードバック制御モデルと仮定し,そのシステム応答を一つの確率過程と考えた自己回帰モデルを適用することにより,着力点動揺の時系列変化をモデル化する. (2)直立機能評価のために有効な自己回帰モデルパラメータを決定する. 予備実験の結果から,安静立位時の着力点動揺時系列データに対し20次の自己回帰モデルが適用可能であることがわかった.そこで,現在の着力点位置と過去の着力点位置情報との関連性を示す指標として,自己回帰モデルから算出した貢献度(自己回帰係数と自己相関関数との積)を用いた.また,現在の着力点位置に影響を及ぼす過去の着力点位置情報についての時間遅れの程度を示す指標として,自己回帰係数の1次モーメントを用いた. 10名の健常者を対象として開眼・閉眼条件下で実験行い,これらのパラメータの有効性を検証した.その結果,貢献度および自己回帰係数の1次モーメントは,比較的安定な開足位の安静立位時においても開眼・閉眼条件間で統計的に有意な差異が認められた.開眼時には,閉眼時に比べてより過去の着力点位置情報が現在の着力点位置の調節に関与していることがわかった.以上のことから,今回提案した自己回帰モデルに基づく2種類のパラメータは,安静立位時の姿勢制御機能を測定評価する指標として有効である可能性が示された.
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