2000 Fiscal Year Annual Research Report
運動に伴う筋損傷後の神経筋接合部形態変化と筋線維タイプ移行の可能性に関する研究
Project/Area Number |
12780025
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
西沢 富江 鳥取大学, 医学部, 助手 (30283980)
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Keywords | 筋損傷 / 神経筋接合部形態変化 / 一次シナプス間隙 / 二次シナプス間隙 / 筋線維タイプ移行 |
Research Abstract |
本研究では、損傷筋上の神経筋接合部(NMJ)の微細構造を電子顕微鏡にて観察し、筋損傷が神経筋接合及び神経終末に及ぼす影響を検討した。実験には生後10週齢のF344系雄ラットを用い、被験筋は長指伸筋とした。生理食塩水に溶解した0.5%塩酸ブピバカイン(BPVC)溶液を筋内に注入し、筋損傷を引き起こした。BPVC投与1,2,3,4週間後に筋を摘出した。摘出した筋を3.5%のグルタールアルデヒドで固定した後、アセチルコリンエステラーゼ染色を施して運動終板(MEP)を同定した。MEPを含んだ筋束を電子顕微鏡用に包埋し、電子顕微鏡観察を行った。さらに縦断凍結切片にコリンエステラーゼ染色と鍍銀染色を施し、光学顕微鏡観察を行った。筋損傷に伴い構造破壊を起こしたNMJでは、神経終末がMEP付近に遊離し、その後、MEPに接地するのが観察された(1週間後)。MEPに再接合した神経終末は分枝し(2週間後)、時間経過に伴い、さらに終末分枝の増加、それぞれの太さも増大した(3週間後)。一方、BPVC投与3,4週間後には、核が縦一列に並んだ筋線維上にNMJが観察された。筋損傷後や除神経後の筋において、核が一列に並ぶ筋線維が頻繁に観察されることから、筋線維の再生に伴い、NMJは再形成される可能性が考えられる。BPVC投与1週間後のNMJでは、軸索終末が筋線維と接合し、一次シナプス間隙を形成しているのが観察された。その後、時間経過に伴い二次シナプス間隙が徐々に形成された。BPVC投与3週間後のNMJでは、正常筋と類似した形態特徴を示すようになった。BPVC投与に伴い損傷した筋線維に観察されるNMJの形態変化は、発生初期の筋細胞における、NMJの形成過程にみられる形態変化と類似していることから、筋損傷に伴い構造が破壊されたNMJは、時間経過に伴い漸次再形成され、筋線維と再接合を起こす可能性が示唆された。
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