2000 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける「多文化的歴史教育」の研究-社会史に基づく内容構成論を中心に-
Project/Area Number |
12780145
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
桐谷 正信 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (90302504)
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Keywords | 多文化教育 / 社会科教育 / 歴史教育 / 社会史 |
Research Abstract |
本研究は,アメリカにおける「新しい社会史」に基づく「多文化的歴史教育」を思考モデルとし,多様な民族・文化に公正に配慮した歴史教育の内容構成の理論的枠組みを考える視点を抽出することである。そのため,本年度の研究活動は,アメリカで開発・実践されている「多文化的歴史教育」カリキュラムの収集・分析を中心とし,特に,ニューヨーク州,ニューヨーク市,カリフォルニア州の合衆国史カリキュラムを主たる対象とした。具体的には上記の州・市の教育局に赴き,社会科教育担当者及びカリキュラム開発担当者への意見聴取を行った。 同時に,ニューヨーク州とカリフォルニア州の社会科スタンダードとフレ-ムワークにおける初等教育段階の多文化的歴史教育の相違を分析した。1990年代後半以降のスタンダード運動に影響を受けた社会科カリキュラムの改訂では,K-12学年に渡って一貫した歴史学習の重視の傾向が見て取れる。ゆえに,1990年代以降のアメリカの多文化的歴史教育について検討する際には,第3・4学年で行われる地域史(Local History)と州史(state History)を多文化的歴史教育の入門期ととらえ,そこへの検討が必要であると考えた。 ニューヨーク州,カリフォルニア州は,合衆国の東と西を代表する多文化地域であり,両州とも社会科カリキュラムを歴史を重視し改訂を行った。しかしながら,子どもたちの歴史認識において重要な入門期である初等段階における文化的多様性への対応は対照的である。ニューヨーク州が統一的な国家の形成において文化的多様性の持つ豊穣性に焦点を当てているのに対し,カリフォルニア州は合衆国のもつ文化的多様性をまとめあげた統一性(合衆国憲法,連邦制)に焦点を当てていることと,地域や州のアメリカ化の過程から合衆国史が想定されていることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)