2001 Fiscal Year Annual Research Report
標本抽出デザインを考慮した社会調査データの多変量解析
Project/Area Number |
12780180
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
前田 忠彦 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 助手 (10247257)
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Keywords | 標本調査 / 郵送調査法 / 因子分析モデル / 二段抽出 / デザイン効果 / 相関比 / 共分散構造分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は社会調査のデータ解析において,標本抽出デザイン(特に二段抽出)に合わせた分析を行うことの必要性とその効用を,多変量データ解析の文脈において考察することである。特に共分散構造分析(因子分析モデル)に焦点を合わせて研究した。 平成13年度は"A)二段抽出因子分析モデルにおけるデザイン効果の検証"および平成12年度中に実施した郵送調査についての"B)調査データの基礎情報に関する分析"と"C)同データによる研究課題に関する解析事例の検討"が,主たる研究実績となった。 まずA)の点について,PSU(第1次抽出単位)内共分散行列とPSU間共分散行列にそれぞれ因子分析モデルを仮定する二段抽出因子分析モデルによる分析をせずに,総共分散行列にのみ因子分析モデルを仮定した分析を行うと大きく推論を誤るケース(これが端的に二段抽出因子分析モデルの効用を示すので,広い意味でのデザイン効果が生じるケースと呼ぶ)に注目し,デザイン効果が発生しやすい条件を数値実験により明らかにした。要約すれば,個々の変量の相関比が大きい場合,因子負荷量に変量間で大きなアンバランスがあるケースで発生確率が高まった。 C)の点に関する検討では社会調査データの中では顕著なデザイン効果を見出せない場合も多いが,その理由は,B)の検討で,郵送調査で得たデータでの単変量的な文脈でのデザイン効果(平均推定量の分散の倍率)が1.5倍程度までに収まっていることが確認され,相関比が二段抽出モデルを必要とする水準に達していないケースが多いためであることが示唆された。そうした中で二段抽出モデルの効用を最も端的に示すケースはPSU内とPSU間の共分散行列に異なる因子分析モデルが当てはまる場合であり,こうした興味深い構造を発見するための(理論的にではなく経験的に)有益な手段について知見を得た。
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[Publications] 前田忠彦: "二段抽出におけるデザイン効果の検証"日本行動計量学会第29回大会発表論文抄録集. (29). 354-357 (2001)
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[Publications] 前田忠彦: "二段抽出因子分析モデルにおけるデザイン効果の検証"研究集会「因子分析と共分散構造分析に関する諸問題」講演報告集. 45-63 (2001)
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[Publications] 前田忠彦: "郵送調査法の特徴に関する研究:一つの事例報告"第33回数理社会学会大会研究報告要旨集. (33). 10-13 (2002)
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[Publications] 前田忠彦: "郵送調査法の特性に関する研究-2000年度1都3県有権者調査報告-"統計数理研究所研究教育活動報告. No.14. 1-106 (2002)