2000 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子組換え作物からの遺伝子の生態系への拡散動態監視技術の開発に関する研究
Project/Area Number |
12780427
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助手 (50322368)
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Keywords | 遺伝子組換え作物 / 環境影響評価 / 生態系 / 人為撹乱 |
Research Abstract |
ダイズの野生祖先種であるツルマメは,東アジアに広く分布している貴重な野生遺伝資源植物であるが,中国では家畜の過度の摂食により(珍稀瀕危植物に指定),日本では生育地の破壊により個体群が減少している。ダイズとツルマメとの自然交雑率は低いが,0ではないため,遺伝子組換えダイズからの遺伝子が花粉を通してツルマメの野生集団へ拡散する影響が懸念される。遺伝子組換え作物の導入遺伝子が近縁野生種との交雑を通して生態系に拡散する程度は,自然交雑率と定着率によって決まる。自然交雑によって生じた雑種は栽培地とは異なる環境で生活することになる。 日本では,ツルマメは河原などの自然植生のほかに,田畑や道路の法面や空き地などの人為的な撹乱の及ぶところに生育している。ツルマメの繁殖効率は自生地での撹乱の強度や頻度に依存して変動するので,ツルマメの集団に侵入したダイズ由来の遺伝子の動態は人為撹乱のあり方に影響されると考えられる。このような場合の詳細を知るために,ツルマメの自生地における雑種後代の動態と適応度を評価した。 ダイズとツルマメの雑種後代では,自然環境下で生育可能な硬実性などの特性をもつ個体が分離した。花粉親のダイズに固有の酵素ENPの対立遺伝子bとこれらの特性との間には連鎖関係がみられなかった。自生地に移植した雑種後代において,開花に至った個体の割合(生存率)は集団平均で0〜66.7%であった。前年度の同じ集団でのツルマメの生存率は0〜47%であり,個体あたりの生産種子数は8.3〜176.0である。雑種後代では,蔓型の系統でも巻きつき能力はツルマメより低く,開花から結実までの期間がツルマメより長いため,植被の密な環境での適応度はツルマメよりも低いと考えられる。しかし,中程度の撹乱がある環境では,雑種後代は生存し,繁殖できると推定される。このような環境では,野生集団中に侵入した自然選択に中立な遺伝子(一部の除草剤抵抗性遺伝子など)は長期間残ると考えられる。以上のことから,ツルマメのような野生遺伝資源植物の生育する地域での遺伝子組換え作物の栽培には慎重な対応が必要であると結論付けた。 なお,本研究の成果は,日本雑草学会第40回大会(2001年4月・大阪)および第18回アジア太平洋雑草科学会議(2001年6月・北京)で発表する。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Nakayama,Y.and H.Yamaguchi: "Survivorship of hybrid derivatives between cultivated and wild soybeans in the natural habitats under human disturbance"Proc.APWSS Conf.. 18(印刷中). (2001)
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[Publications] 中山祐一郎,山口裕文: "雑草科学実験法 第1章 第3節 第5項 作物-雑草間遺伝子移動試験法"日本雑草学会(印刷中). (2001)