2000 Fiscal Year Annual Research Report
抗NP抗体の親和性成熟に伴う抗原認識機構の変化に関する構造生物学的研究
Project/Area Number |
12780458
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
織田 昌幸 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (20318231)
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Keywords | 抗体 / 抗原 / 親和性成熟 / アビディティ / 熱力学 / 速度論 / 分子認識 |
Research Abstract |
抗原として分子量の異なる蛋白質にハプテンであるニトロフェニル(NP)の数を変えて結合させたものを用い、それぞれのハプテン・キャリアー抗原に対する抗体との相互作用解析を行った。免疫初期に産生される抗体は1価の抗原に対する親和性が極めて低いのに対して、多価抗原に対しては十分高い親和性を有していた。この結果は複数のFab腕が同時に抗原に結合することで高いアビディティを獲得したことによると考えられる。キャリアーに卵白リゾチーム(14kDa)を用いるとオボアルブミン(45kDa)以上の大きさの場合と異なり、1分子の抗体が1分子の多価抗原に二価結合する複合体形成は認められず、抗体のもつFab腕の可動範囲を示唆する結果が得られた。また1価の親和性の違いによって抗体のもつアビディティの寄与が異なることから、この違いが生体内で起こる親和性成熟の必要条件の1つであることが示唆された。キャリアーの大きさ、NPの導入数、抗原・抗体の濃度比により、形成される複合体の結合比やその親和性が異なり、細胞表面上の抗原レセプターが関与する複合体形成機構を明らかにすることができた。これらの成果は平成13年2月現在、論文投稿中である。 上記の抗NP抗体のうち、明らかに同じクローンから成熟したと考えられる4種類の抗体について、さらに詳細な熱力学的および速度論的解析を行った。これらの親和性成熟の方向は、エンタルピー変化をほとんど変えずにエントロピー変化を増大させ、また結合速度、解離速度ともに小さくするものであった。これは抗原認識に適したパラトープ構造を有する「lock-and-key」型への成熟であることを示唆している。これらの成果は平成13年2月現在、論文投稿準備中であり、同時に得られた結果を立体構造情報と照らし合わせて解析すべくNPとFab複合体の結晶化を試みている。
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