2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋村 健児 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70301140)
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Keywords | 神経発生 / 視床 / 神経核 / 領域特異性 / シグナル分子 / パターン形成 |
Research Abstract |
脊椎動物の間脳領域に位置する視床では、多数の神経細胞が神経核とよばれる組織構築をとって存在している。これらの神経核では、同じ特性を持つ神経細胞が集合体を形成し、性質の異なる神経細胞の集合体から分離して存在している。本研究では、このような視床の各神経核の個性が、どのようなメカニズムによって決定されているかを解き明かすことを目的としている。これまでの研究により、視床核形成の早期から視床核特異的に発現する4種類の転写制御因子を同定し、このうち一部の発現が細胞間シグナル因子であるSonic Hedgehog(SHH)によって制御されていることを明らかにした。本年度は、SHHによる細胞形質の決定機構についてさらに詳しく解析を行い、その作用濃度の違いによって少なくとも2種類の幼若神経細胞の形質を規定することを明らかにした。さらに、このSHHの異なる作用は、SHHシグナルの細胞内伝達因子であるGliファミリー因子の種類の違いによってもたらされていることを、初めて実験的に示した。また、このように規定される転写制御因子Sox14を発現する幼若神経細胞は、視床内の非常に特徴的な経路を通って移動し、最終的に神経上皮上の生誕地から離れた場所に集積することを見いだした。この集合体は、解剖学的に同定される視床神経核の一つに一致すると考えられる。このような移動様式は視床のごく一部の神経細胞に特異的であることを確認した。したがって、二次元上に展開する視床原基の位置に依存して異なった形質の神経細胞が産み出され、それらの神経細胞はおそらくそれぞれに特徴的な移動様式をとることにより、立体的に整然と配置された神経核構造が形成される可能性が考えられた。脳の主要な組織形態である神経核構造の形成機構は、その大部分が未解明であるが、今回の発見はその解明に向けての重要な手がかりとなることが期待される。以上の結果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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[Publications] Mizuguchi, R., et al.: "Conbinatorial Roles of Olig2 and Neurogenin2 in the Coordinated Induction of Pan-Neuronal and Subtype-Specific Properties of Motoneurons"Neuron. 31. 751-771 (2001)
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[Publications] Cobos, I., et al.: "Fate Map of the Avian Anterior Forebrain at the Four-Somite Stage, Based on the Analysis of Quail-Chick Chimeras"Developmental Biology. 239. 46-67 (2001)
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[Publications] Kobayashi, D., et al.: "Early Subdivisions in the Neural Plate Define Distinct Competence for Inductive Signals"Development. 129. 83-93 (2002)