Research Abstract |
本科研は,日本留学試験の開始を契機に,当該試験の得点等化の実現を目指すとともに,得られた成果を,他の公的試験における得点等化の実現に役立てようとするものであった。 1.得点等化の方法について 日本留学試験では,科目ごとの特性の違いから,全体で統一的な等化方法を用いることができず,大別して共通項目法(日本語)と共通受験者法(基礎学力科目)の両方を用いざるを得なかった。しかしながら,研究としては両方の事例が得られることになり,広い範囲の応用が可能な成果が得られる見込みがあるとも言える。 共通項目法に関しては,2001年11月の試行試験の結果,項目反応理論(IRT)の適用可能性が(基礎学力科目も含めて)明らかになり,ソフトウェアの使用等についても多くのノウハウが蓄積されつつある。具体的な等化方法については素点を用いるtrue score equatingと,潜在特性の推定値に基づく方法との優劣が議論された。今後は,新作項目をいきなり本試験に用いるのでなく,プリテストを実施することが重要になろう。共通項目法のキーとなる,項目再利用に関しては,試験実施地域を考慮したテスト設計等,若子の新方式の考案もなされた。さらに,数名の分担者は,IRTに関する新たな知見を得ており,これらは,我が国の試験の範囲を超えた結果として,国際的に発信可能であろう。 2.データベースシステムの設計・仕様策定 この点については,仕様書が完成した。この過程で,日本のテストに特有の大問の扱いについて新たな問題が提起された。 3.得点等化されたテストに関する法的問題 公的試験の結果は,個人の人生における選択の範囲を狭めるものである以上,それが受験者に不公平感を与える可能性のあるテストは,常に訴訟の対象になる危険性をはらんでいる.特に得点等化されたテストは,問題の非公開性,等化方法の不透明性という点において,より困難な問題をかかえることになる。 この点に関しては,2002年度から,名古屋大学法学部の森際康友教授を研究協力者に迎え入れ,同教授と森総合法律事務所の弁護士によって,まずは日本の現行法制下で,さらには,欧米諸国における判例研究等が行われた。
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