2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12834005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々 真一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30235238)
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Keywords | エントロピー / カオス / 非平衡 |
Research Abstract |
今年度は非平衡定常状態の熱力学構造の理解に関してめざましい発展があったので、それに集中し以下の研究成果を得た。 (1)非平衡定常状態における現象論としての熱力学を再考察し、非平衡定常状態に拡張された熱力学関数を測定量から計算する手続きを明らかにした。これにより、熱力学の拡張の仕方が具体的になり、熱力学関数が存在するための必要十分条件がわかった。この条件を満たすかどうかは、定量的に検証できるものであり、実験的に肯定的な結果がでれば大きなブレークスルーになるだろう。この理論は、非平衡秩序パラメータという新しい物理量をもたらし、それによって非平衡性に由来する新しい力の存在や気液転移温度が非平衡性による変化を記述できる。これらの効果も具体的に実験で測定できる。以上の点を簡潔にまとめた論文を投稿中である。 (2)非平衡定常状態にある大自由度動力学系からこの現象論を抽出できるかどうかを考察した。具体的には、外力で駆動された格子気体モデルを例題に数値実験を行い、非平衡状態に拡張された熱力学関数が存在するための条件を満たすかどうかを調べた。現在のところ、期待はもてるが、まだ確実な結果にはいたっていない。学会で発表し、数値実験の精度を検討しながら投稿論文を準備中である。 (3)非平衡定常状態での臨界温度の平衡のものからのずれに関する理論的考察を行った。平衡のオーダーパラメータ場と流れ場の動力学を出発点にする従来の理論とは全く異なったアプローチとして、平衡のオーダーパラメータ場と非平衡オーダーパラメータの結合によって臨界性の変化を定量的に議論した。既存の理論との関係などを明らかにしないといけない。学会で発表し、投稿論文を準備中である。
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