2001 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系としてのヒトの性行動と性感染症流行の数理的解析
Project/Area Number |
12834009
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
梯 正之 広島大学, 医学部, 教授 (80177344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 港 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40251227)
稲葉 寿 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (80282531)
津久間 秀彦 広島大学, 医学部・附属病院, 助教授 (10222134)
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Keywords | 性行動 / 性感染症 / 数理モデル |
Research Abstract |
前年度のシミュレーション環境の整備・実施ならびに流行データの分析に引き続き、モデルの改良とシミュレーションの実施、性・年齢別データの分析とそのシミュレーション結果との整合性の検討等を行なった。 前年度は、男女別・都道府県別の性感染症の流行データによる地域相関分析から、複雑な要因の関与が示唆され、また、活発度の違いを考慮したペア形成モデルのシミュレーションから、活発度の違いを適切に考慮したモデルの重要性が示唆された。 本年度は、日本人の性感染症の罹患状況や性行動の実態調査結果が、数理モデルによる予測と一致するかを検討した。全国8道県で調査された9種類の性感染症の性年齢階級別罹患率を統計的に解析し、性・年齢・疾病の種類による罹患パターンの特徴を抽出した。これと、性行動の調査から得られた男女間の年齢毎のカップル構成率を仮定して、性感染症の性・年齢別のコンパートメントモデルから得られる平衡状態での年齢毎の罹患率パターンを比較した。その結果、パラメターを選択し、かなりよい一致が得られることがわかった。また、個人ベースモデルによる分析も実施した。 また、稲葉は、年齢構造をもつ人口におけるエイズ流行の数理モデルの定式化と数理的な解析をおこなうとともに、これまでの数理人口学的研究をまとめた著書「数理人口学」を刊行した。 研究を通して、性行動と性感染症をめぐる複雑性の問題は奥深く、まだまだ分析すべき課題が残っていることがわかった。特に、人間社会の状況と性感染症の病原体の進化の関連性(性行動の活発化や抗生物質の使用を想定)など、今後も解析を進めたい。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Kakehashi, M.: "Validity of simple pair formation model for HIV spread with realistic parameter setting"Mathematical Population Studies. 8(3). 279-292 (2000)
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[Publications] 洲濱扶弥, 梯 正之: "東南アジアにおけるHIV/AIDSの流行予測と保健対策の検討"広島大学医学雑誌. 48(5). 331-342 (2000)
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[Publications] Inaba, H.: "Persistent age distributions for an age structured two sex population model"Mathematical Population Studies. 7(4). 365-398 (2000)
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[Publications] Inaba, H.: "Revisiting Kermack and McKendrick"「数理モデルと関数方程式」京都大学数理解析研究所講究録. 112-121 (2000)
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[Publications] Ohashi, J., Yoshida, M., Ohtsuka, R., Nakazawa, M.他: "Analysis of HLA-DRB1 polymorphism in Gidra living in South New Guinea"Human Biology. 72(2). 337-347 (2000)
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[Publications] 梯 正之: "数学で解き明かす感染症の流行と進化:麻疹からエイズまで"広島大学理学部数学教室公開講座 数学の基礎と展望. (第10回). 3-14 (2001)
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[Publications] Inaba, H.: "Kermack and McKendrick revisited: The variable susceptibility model for infectious diseases"Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics. 18(2). 273-292 (2001)
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[Publications] Inaba, H.: "Endemic threshold and stability in an evolutionary epidemic model"IMA Volume on "Mathematical Approaches for Emerging and Reemerging Infectious Diseases". (印刷中). (2002)
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[Publications] Inaba, H.: "Nonlinear dynamics of open marine population with space-limited recruitment : The case of mortality control"Journal of Mathematical Analysis and Applications. (印刷中). (2002)
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[Publications] Inaba, H.: "Semigroup approach to a pair formation model in human demography"数理解析研究所講究録(京都大学数理解析研究所). (印刷中). (2002)
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[Publications] Geng, J.P., Kakehashi, M.他: "Theoretical Epidemiology of Infectious Diseases"Tranfor Publishing, Hong Kong. 121 (2001)
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[Publications] 稲葉 寿: "数理人口学"東京大学出版会, 東京. 412 (2002)
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[Publications] 中澤 港 (日本人口学会編): "生殖のメカニズムとヒトの生殖戦略 (13-I, 人口大事典)"培風館, 東京(印刷中). (2002)
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[Publications] 中澤 港 (日本人口学会編): "妊孕力の遺伝要因と環境要因 (13-II, 人口大事典)"培風館, 東京(印刷中). (2002)