2000 Fiscal Year Annual Research Report
薬物乱用少年の情動障害に対する援助・治療の有効性-心理生物学的要因の検討-
Project/Area Number |
12837002
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森田 展彰 筑波大学, 社会医学系, 講師 (10251068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 栄一 東京都精神医学総合研究所, 社会病理, 副参事
佐藤 親次 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (90162437)
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Keywords | 薬物依存症 / 社会復帰施設 / ASI / SDS / PANSS / 心理学的指標 / 認知機能検査 / MRI |
Research Abstract |
慢性薬物中毒者には生物学的障害及び心理的障害が生じるが、その治療過程において可逆性のものと不可逆性のものがあると考えられる。これらの障害の可逆性は、薬物種や使用年数・使用形態により異なる可能性がある。本研究の目的は、薬物乱用者の障害が、薬物使用状況とどのように関係し、また薬物使用中断後どのように回復していくかを明らかにすることである。 今年度は、本研究の初年度にあたり、薬物依存症社会復帰施設(茨城DARC)の入所者28名に対して横断面の調査を行った。 1)薬物使用状況に関して、嗜癖重症度指標(ASI)と依存重症度尺度(SDS)、2)精神症状に関して、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、3)心理学的指標に関して、気分プロフィール検査(POMS)と実存心理検査(PIL)、さらに13名には4)認知機能検査として、簡易精神状態尺度(MMSE)、ウィスコンシンカード分類テスト(WCST)、ベントン視覚記銘検査(BVRT)、べンダーゲシュタルトテスト(BGT)、5)脳の器質的所見としてMRIを施行した。 入所者の乱用薬物は約8割が覚醒剤とシンナーであった。平均薬物使用年数は9.6年、平均断薬期間は4.2ヶ月であった。器質的側面としては、薬物使用頻度の高いものに、MRIにおける脳の萎縮や認知機能の低下を認めた。心理的側面では、断薬期間が6ヶ月を超えた群では抑鬱度が低下し、実存心理検査における「人生の過去の受容度」が高い傾向を認めた。 来年度以降、以上の横断的調査のデータについて事例数を増やすとともに、最初の調査時点をスタートポイントとしてその後の変化を追跡する予定である。
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