2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12871001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 助教授 (70301091)
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Keywords | プラトン / エピノミス / ピュタゴラス主義 / 数学 / 天文学 / 必然性 / 国家 / 善 |
Research Abstract |
『エピノミス』において描出される数学的世界像が、プラトン対話篇の中でとりわけ数学的基盤に支えられる他の作品-『国家』『ティマイオス』『ピレボス』『法律』-との関連において如何なる連続性非連続性を呈するのか比較吟味し、プラトン哲学における数学的世界像の変遷がプラトンの思想の内的展開として如何に理解されうるのか、一つの見取り図を提示し活字にまとめた。 まず第一に、数学的諸学科の中でもとりわけ天文学を奨励する点、そして数の由来およびその教示可能性を巡る議論が天空の観照という感覚与件に帰される点に着目し、この主張プラトンの他の諸作品との比較において如何に位置づけられるのか解釈を加えた。従来この問題は、『エピノミス』がプラトン偽書であることの証左として処理されるが、本研究は、必ずしもこの処理が妥当ではないこと、むしろそれはプラトン中後期の思索の変遷の中に十分位置づけられうることを論じた。加えて、この問題は、数学的必然性と神的必然性の関係を射程に含む地平で議論されるべきことを本研究は提起した。 第二に、「万物を結ぶ一本の鎖ετζ δεσμοζ」につい一つの解釈を試みた。この鎖は、全ての幾何学図形および全ての数列、そして全ての音階構造、全ての星々の回転運動の調和関係を繋ぐ一本の数的関係であり、それはこの世界に本来的に内在するものであった(δεσμοζ πεψυκωζ παντων τουτων ετζ)(Epin.99le5-992al)。この鎖の存在の認識とは一体何を意味するのか、『国家』における洞窟の比喩および線分の比喩との関係において、またプラトン晩年の「善について」の講義との関連において解釈を加えた。 第三に、これらの『エピノミス』から看取される論点が、新ピュタゴラス主義との関連において如何に解釈されるべきか、いくつかの可能性について考察を加えた。
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Research Products
(1 results)