2001 Fiscal Year Annual Research Report
中国文化構造における「天」と「人」の関わりについての原理論的研究
Project/Area Number |
12871003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
関口 順 埼玉大学, 教養学部, 教授 (10107518)
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Keywords | 縉紳先生 / 天 / 人 / 道 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き<天><人>の関わりについて考察を深め、主に戦国時代の後期から漢代の初期に至る間に縉紳先生が果たした大きな役割について究明した。縉紳先生とは儒者(孔子学派)の一部であるが、孟子や荀子などの諸子タイプの遊説家とは異なる、講学を主とする一群の人々である。この縉紳先生たちは、上古以来の天意の天を継承しつつ、孟荀など諸子タイプの儒者の思想活動の成果を受け継ぎ、かつ老荘の道の哲学を受容した。 それら縉紳先生の思想活動は儒学の経典整備の形で行われた。具体的にいえば、易の解説である繋辞伝等の作成、『礼記』中に収められている礼を主とする諸々の文献の執筆、詩書の講学と注釈、春秋学の展開などである。老荘の道の哲学の導入により、文字で書かれた「物」であるところの詩・書・礼・易・春秋も、それぞれ天・道・天道によって形而上学的な基礎を持つことになり、人間社会の礼もまた道や天と矛盾しなくなった。さらに、上古の天意の拡大により、天意およびそれを承けた王(天子)の役割として、民の教化が強調されるようになった。 これらは、儒学(経学)の中では<天><人>の関係のかたちに集約される。<天>と同じ価値と内容を持つ経典を学び、経典に従って生活することが<人>の在り方なのである。この縉紳先生の<天><人>をめぐる活動が、前漢末以降の儒学の内容をなしていくのである。 以上の今年度の考察は、昨年度の分と併せて論文にまとめ「<天><人>観念の形成とその相関性の確立について」と題して『埼玉大学紀要・教養学部』第37巻第2号に発表する予定である。
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Research Products
(1 results)