2001 Fiscal Year Annual Research Report
軍記物語の研究成果を英雄叙事詩の研究に応用する可能性について
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12871058
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺田 龍男 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30197800)
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Keywords | 軍記物語 / 英雄叙事詩 / 封建制 / 主従関係 / 去就の自由 / 複数封臣制 / 忠誠 / 比較文学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1.軍記物語の成立・写本伝承にかかわる状況を実証的に記述して英雄叙事詩の成立・伝承に関する独自の仮説を提示すること、および2.英雄叙事詩に見られる「去就の自由」を分析してこれを当時の実社会における同種の「自由」とともに日本の軍記物語や歴史資料の例と比較し、激動の時代に生きた人間の行動メカニズムの一端を明らかにすることにある。日本における武士の行動原理を研究した平成12年度につづき、平成13年度は1.中世ヨーロッパの具体例、すなわち実在の人物が複数封臣関係にもとづく「去就の自由」を行使し、相争う異なった「主君」の間を行き来した事例を当時の史料と封建法によって分析し、さらに同じ事件がテーマ化された文芸作品を考察したが、その過程で歴史学者アンドレアス・クスタニヒ博士(オーストリア・ニーダーエスタライヒ州政府文教審議官)に貴重な教示を受けることができた。現在投稿中の論文(独文)では、武力を一元的に管理する支配権力が確立していなかった時代における人間関係の一側面を記述する一方、文芸作品の有する史料としての可能性にもふれて日本・ドイツ双方で文学と歴史学の協力を提言した。2.現在ヨーロッパの歴史学界では「失われた主従関係を回復に導く仲介者の役割」に関心が集まっているが、その研究に寄与すると思われる記述を英雄叙事詩『アルプハルトの死』に見出すことができたのでこれを発表した(邦文)。3.海外研究協力者であるパウル・ポルトマン=ツェリカス教授(グラーツ大学)の仲介により、英雄叙事詩の写本を閲覧する機会を与えられたのはまことに有意義であった。なお現在は、東西における「去就の自由」の対照をおこなう一方、軍記物語と英雄叙事詩それぞれの成立および(写本)伝承の具体的比較をまとめ、最終年度である平成14年度中の発表を目指しているところである。
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Research Products
(1 results)