2000 Fiscal Year Annual Research Report
液滴からの溶媒脱離で生成する微小固体を利用した未知の電子励起状態の検出
Project/Area Number |
12874068
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 勝義 新潟大学, 理学部, 助教授 (90210385)
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Keywords | 光化学 / 微小液滴 / 微小固体 / 超音波振動 / ピレン / B-蛍光 / エキシマー |
Research Abstract |
本研究では,従来の発光スペクトル観測における光学セルを微小液滴に置き換え,発光スペクトルを変形させる最大の要因である自己吸収(再吸収)を実験的に解消することを目的として装置を製作した。市販の加湿器の超音波振動板をフラスコ底部に取り付け,溶液から微小液滴を発生させ,溶質分子の光吸収帯をレーザにより励起し,生じた発光を分光器で観測するシステムを構築した。同法により,高濃度ピレン溶液の発光スペクトルと吸収スペクトルが重複する波長領域において自己吸収の影響がまったく見られないことを確認した。従来型の光学セルを用いるバルクな溶液での観測とは異なる着想にもとづく方法が奏功した結果といえる。また,アントラセン溶液の微小液滴を約5℃加温することで,アントラセン固体の発光が出現することを見出し,微小液滴周囲のわずかな温度上昇により微小固(重量約1pg)体の生成が可能であることを明らかにした。 微小液滴の上記の特徴を利用して,ピレン溶液の微小液滴からピレン微小固体を発生させ,光励起後ピレンエキシマーが生成する際の過渡的電子状態からの発光として知られるB-蛍光を観測した。これまで,ピレンのB-蛍光を観測するには,ピレン単結晶を低温条件下(110K)でピコ秒レーザにより励起し,発光をピコ秒時間分解分光装置を用いて観測する必要があったが,本研究による,微小液滴から発生させた微小固体を利用する手法により,常温条件下かつナノ秒レーザ励起後の定常光測光でも,容易に過渡的電子状態からの発光を観測することが可能となった。液滴の溶媒脱離を利用して微小固体を生成するという新しい方法は,今後の光化学における新展開をもたらすものと期待される。
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