2000 Fiscal Year Annual Research Report
重典型金属錯体にみられる立体的に活性な非共有電子対の発生要因
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12874079
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 陽一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30004500)
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Keywords | 立体的に活性な電子対 / 鉛(II)錯体 / ピリジル型六座配位子 / ルイス酸 / ポリフィリン錯体 / 単結晶構造解析 / ビスポルフィリン / ビスマス(III)錯体 |
Research Abstract |
錫(II)、鉛(II)、ビスマス(III)などのようなs電子を2ヶ持つ金属イオンでは、配位子の種類によりその電子対が一定の方向を占め、その方向に配位子を持たない構造を取ることが知られている。我々は、最近鉛(II)と六座配位子N,N,N′,N′-tetra(2-pyridylmethyl)ethylenediamine(tpen)の錯体が、そのような構造を取る可能性を見い出した。そこで、このような立体的に活性なlone pairがあらわれる要因を明らかにする目的で、一連の錯体を合成し、立体構造の詳細を明らかにすることとした。(1)-連のテトラピリジル型六座配位子と鉛(II)との錯体.2-pyridylmethyl基の間のジアミン部分の炭素鎖をtpenのC_2から、C_3(tptn)、C_4(tpbn)へと増やした配位子を合成、その鉛(II)錯体を合成した。その結果、tptnではtpenと同型の単核錯体が得られたが、tpbnでは配位子の2ヶのbis(2-pyridylmethyl)amine部分が別々の鉛(II)イオンに配位した複核錯体が得られた。X線構造解析で明らかにした構造を詳細に検討した結果、複核のtpbn錯体で明らかにlone pairの占める空間が確認された。既知のedta錯体などとの構造の比較の結果、酢酸イオンなどの陰イオン性の配位子の配位が重要な要因ではないかと考えられた。次に既知化合物も含めた一連の錯体の構造と、文献にみられる議論とを総合して考察し、陰イオン性の配位子の配位により、もともとs電子であるlone pairにp軌道性が混ざりあうことが立体的に活性なlone pairの出現に重要であると考えられるに至った。(2)アセチレン架橋ポルフィリンニ量体の鉛(II)錯体.立体的に活性なlone pairが、別のLewis酸に配位する可能性を明らかにlone pairを持つ錯体で調べようとしたが、溶媒の選択などの難点があり、適当な系を見出せなかった。そこで、分子内に複数の金属イオンを導入出来る表記ポルフィリンニ量体の鉛(II)錯体を合成、分子内でこの問題を調べることとした。現在、二つのポルフィリン間の一方に鉛(II)を持ちかつそれが立体化学的に活性なlone pairを持つ錯体の合成に成功し、次に第二のポルフィリンにLewis酸として適当な金属イオンの導入を試みている段階である。以上、本研究では、立体化学的に活性なlone pairを持つ錯体について本格的に研究を進める十分な手掛かりを得ることが出来た。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Atsushi Inagaki: "Samarium (III)-Propylen ediaminetetraacetate Complex : A Water-Soluble Chiral Shift Reagent for Use in High-Field NMR."Organic Letters. 2(No.23). 3543-3545 (2000)
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[Publications] Taira Imamura: "Coupling of Ground-State Molecular Vibrations to Low-Energy Electronic Transition of Ruthenium (III,II) Porphyrin Dimers."Journal of the American Chemical Society. 122(No.37). 9032-9033 (2000)