2000 Fiscal Year Annual Research Report
かご型シラセスキオキサン骨格に捕捉された水素原子の磁気センシングへの応用
Project/Area Number |
12874089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡上 吉広 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (10194333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 敏幸 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (90037242)
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Keywords | 水素原子 / シラセスキオキサン / ESR / かご型骨格 / 希土類イオン / 常磁性酸素分子 / 磁気的相互作用 |
Research Abstract |
本年度の目的は、かご型シラセスキオキサン骨格内に捕捉された水素原子が、骨格の外部に存在する常磁性種と反応することなく磁気的相互作用を示すのか確認することであった。 水素原子を捕捉させるかご型シラセスキオキサン誘導体としては、最大の水素スピン濃度を示したトリメチルシロキシ基を側鎖に有する二重4員環のシラセスキオキサンQ_8M_8を用いた。また常磁性化学種としては、大きな磁気モーメントを有する希土類イオン(錯体)を選択した。 合成したQ_8M_8にγ線を照射してかご構造内に水素原子を捕捉させた。この水素原子を捕捉しているQ_8M_8を粉末のまま、またはジクロロメタン溶液とし、希土類錯体を加えて、常磁性酸素分子の存在する空気下と脱気後窒素のみを導入した窒素下とでESRスペクトルを測定した。 実験の結果、固体粉末の場合には、酸素存在下でも酸素のない状態でも希土類イオンによる磁気的影響は現われなかった。これは酸素分子が粉末のすき間に入り込める気体であるのに対して、希土類イオンは大きな配位子を有する錯体の粉末であるため、水素原子の捕捉されているかご骨格には十分に接近できないものと考えられる。 溶存状態においても酸素分子の影響は非常に大きく、多くの酸素分子が存在すると設定可能なマイクロ波強度の範囲内では飽和が見られなかった。そのため希土類イオンによる磁気的影響を見積もるためには酸素分子の存在しない系で測定を行う必要があった。溶液調製直後にはESRスペクトルの線形や飽和挙動に影響は見られず、希土類イオンによる影響はないと考えられた。しかしながら時間がたつと水素原子のESRシグナル強度が低下し、最終的には全くシグナルが観測されなくなった。これは希土類イオンの影響により水素原子の脱離もしくはかご型骨格自体の崩壊が起こっていると考えられ、その反応性について検討する必要がある。
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