2000 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系化学反応論のためにナノ秒で脱保護可能な光応答性保護基を創る
Project/Area Number |
12874091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤森 憲 筑波大学, 化学系, 助教授 (90015983)
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Keywords | 光トリガー / 光化学反応 / フォトソルボリシス / 光応答性保護基 / 光化学転位反応 / ヒロロキシルアミン誘導体 / 光加溶媒分解反応 / 転位反応 |
Research Abstract |
生体内情報伝達物質に含まれるカルボキシル基や燐酸基の光応答性保護基は、光エネルギー受容部と生体内情報伝達物質への架橋部からなる。光受容部としてアントラセンを、架橋部には結合エネルギーの小さなN-O結合を選んだ。cAMP等の燐酸誘導体生体内シグナリング分子のモデルとして、ジフェニルフォスフィン酸を選び、N-(9-アントラニルメチル)-N-メチルヒドロキシルアミンと脱水縮合しエステルとした(9-Anthranyl-CH_2-N(CH_3)-O-P(0)Ph_2;I)。化合物Iに溶液中光照射すると、定量的に目的とするジフェニルフォスフィン酸が生成した。本光応答性保護基反応は、(1)ジフェニルフォスフィン酸の1,2-光脱離反応と、(2)我々がphoto-aza-Wargner-Meerwein転位反応と命名した、新規光化学反応の2つの経路で起ることを明らかにした。前者の寄与が約20%、後者の寄与が約80%である。後者では、N-O結合がヘテロリシスを起し、N原子上に発生する陽電荷をアンスラニル基が隣接基関与により安定化する。アンスラニル基は最終的にCからNに転位し、N-メチル-N-アンスラニルアミン(An-NHCH_3)を生じる。1,2-光脱離反応では、イミンを生成する。本光応答性保護基反応の量子収率が約60%と大きい事から、反応が励起三重項からN-O結合開裂を起している可能性がある。三重項増感反応反応により、確かに化合物Iの光応答性保護基反応は励起三重項からも起るが、分子状酸素の影響から本光応答性保護基反応は主として励起一重項状態から起ると推定された。 今後この新規photo-aza-Wargner-Meerwein転位反応をレーザーフラッシュフォトリシスにより詳細に検討する。N原子を含まない、photo-Wargner-Meerwein転位反応で脱保護できる光応答性保護基の開発を試みる。
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