2001 Fiscal Year Annual Research Report
磁気受容機構の研究材料としてのフナムシの可能性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
12874113
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
畑中 恒夫 千葉大学, 教育学部, 助教授 (70143253)
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Keywords | フナムシ / 磁気受容 / 鉄粒子 / 中腸腺 / 鰓 |
Research Abstract |
昨年の研究により、行動実験から磁気受容機構の光受容器媒介説の可能性が否定され、磁鉄鉱依存説の可能性が強まったので、磁鉄鉱を含む受容器構造の探査と神経応答特性の追求を目指した。ミツバチでは腹部の各体節に鉄粒子を含む栄養細胞の混じった帯状組織が見られ、それが磁気受容器と考えられているが、フナムシではそのような鉄の存在は示されなかった。フナムシと近縁のワラジムシでは、肝膵臓(中腸腺)のB細胞に鉄、S細胞に銅が貯蔵され、それらはそれぞれ別の有害な重金属を吸着し除毒する働きをするとされている。フナムシでも中腸腺にわずかな鉄の存在が示されたが、それより多量の鉄が消化管内に存在していた。それは前腸から見られることから、中腸腺分泌の消化液に由来するものではないと考えられるが、詳細は不明である。さらに、腹脚の鰓の表面に規則正しく配列した鉄の沈着が見られた。ワラジムシでは鰓に気管の開口があるが、フナムシの鰓表面は走査電顕で見ても特別な構造が見られなかった。この、規則正しい配列は、呼吸あるいは水分調節に関連したクチクラ構造に対応していると思われる。ミツバチの栄養細胞の鉄も羽化後、日齢と共に増加し、本来は何らかの代謝に関与する細胞で、磁気受容への関与は副次的と考えられている。磁気受容に際しては磁気を増幅する働きをすると考えられており、神経に機械的作用をすると考えられる鳥類の三叉神経系の磁気受容器の様な構造は見られていない。フナムシでは他に多量の鉄粒を含む構造が発見できなかったが、ミツバチのように鉄粒が単に磁気の増幅器として働くだけなら、これらの鉄粒の近くに向かう神経から磁気変化に対する応答が記録される可能性がある。そこで、胸部及び腹部神経節から出ている神経からの活動を記録したところ、胸部下部や腹部上部の神経で、磁気変化に対する応答と見られるものが記録された。現在、コイルにより磁気の変化を定性的、定量的に与えられる刺激装置を制作中(行動実験用では神経生理の実験では使えないので)であり、神経応答の特性の詳細な調査については進行中である。また、中枢での応答記録法も試行中である。
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