2001 Fiscal Year Annual Research Report
光ヘテロダイン原子間力顕微鏡による固体熱物性のナノスケールイメージングの研究
Project/Area Number |
12875007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 理 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30239024)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 超音波 / レーザー / 熱波 / ナノ構造 / ヘテロダイン / 走査プローブ顕微鏡 / 薄膜 |
Research Abstract |
本研究は、固体熱物性の空間的分布をナノスケールで画像化できる光学ヘテロダイン原子間力顕微鏡を開発することを目的とした。試料表面においてレーザー照射により光熱的に励起された超音波振動(周波数100MHz以下)の振幅および位相を、ナノメートルの横空間分解能で2次元画像化する。これにより試料表面および表面下の熱的な性質についてのナノメートル空間分解能測定を可能にする。 以下に示すようにして光ヘテロダイン原子間力顕微鏡を構築した。SiN透明カンチレバーを持つ原子間力顕微鏡のカンチレバー支持部に圧電素子をとりつけ、カンチレバーを周波数ω_1=11MHzにて振動させる。探針による試料表面の観察部位にω_1近傍の周波数ω_2で変調された赤外光を照射し試料表面に周期的な熱振動を励起する。試料表面は試料の局所的熱物性を反映してω_2による膨張収縮を繰り返す。試料探針間相互作用の試料探針間距離に対する非線形性により、カンチレバーの平均変位はω_1-ω_2の振動数で変化する。この変化の振幅と位相を原子間力顕微鏡の光てこ検出部を用いて検出し画像化する。試料としてSi基板上にCr薄膜(膜厚100nm)およびSiO_2/Cr薄膜(膜厚150nm/100nm)を作製したものを用いた。これらは同一基板上にμmスケールのモザイク状に形成されている。試料表面層は同一膜厚のCr層で覆われているので、表面から100nm深さまでの機械的な性質は試料表面の場所によらないようになっている。この試料についての光ヘテロダイン顕微鏡による観測を行った。試料表面下のSiO_2層の有無による熱物性の違いを反映して、位相像に大きなコントラストが得られた。1次元熱拡散モデルに基づいてこのコントラストを半定量的に解析した。これらの結果により光ヘテロダイン顕微鏡が試料表面下の局所的熱物性を画像化する有力な手段であることが示された。
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