2000 Fiscal Year Annual Research Report
強い非線形音波により励起される音響流の分岐と乱流遷移の機構解明
Project/Area Number |
12875033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢野 猛 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60200557)
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Keywords | 音響流 / 高レイノルズ数 / 乱流 / 定在波 / 共鳴振動 / 非線形音響 |
Research Abstract |
決定論的方程式に支配される流体の不規則運動である「乱流」は,決定性と偶然性という矛盾した二側面をもつがゆえに,長い間にわたって,流体力学のみならず基礎科学の重要な問題として位置づけられ,その結果,多くの優れた成果を生み出してきた.しかしながら,音響流の乱流現象に関しては,ほとんど手がつけられておらず何も分かっていない.したがって,通常の乱流と同様に,(i)流れの不安定化と分岐を経由して乱流化するのか,(ii)不規則性の中に普遍法則を内包しているのか,それとも,(iii)通常の乱流とは異なる物理的機構によるのか,などの基本的な問題さえ未解明である. 本研究は,上述の三点に関して基礎的な理解を得ることを目指すものである.そのために,強い非線形効果によって高レイノルズ数の音響流が現れる典型的な問題として,閉じた音響管内に強い音の定在波が生じているときに,これによって管内に誘起される音響流の問題をとりあげた. 管の形状や音波の振幅をさまざまに変えて精密で大規模な数値計算を行った結果,以下のことが明らかになった:(1)音響流の流速のマッハ数は概ね音波による振動速度のマッハ数の2乗程度である.したがって,音波の振幅が小さいときには音響流の流速は非常に小さい.(2)管の形状で決まる固有振動数で音波を励起すると,共鳴振動が生じ,音波の振幅は大振幅となりうる.このとき,音響流のレイノルズ数は大きくなる.(3)音響流のレイノルズ数が比較的大きい(数千程度)場合でも,管の断面方向の長さが定在波の半波長より小さければ,現れる音響流の性質は,古典的な非圧縮定常流と定性的に変わらない.(4)音響流のレイノルズ数が大きく,管の断面方向の長さが定在波の半波長より大きいとき,音響流は非定常化し,渦の"結合"と"分裂"を繰り返しながら時間発展する. 平成13年度では,上記の高レイノルズ数の音響流の振る舞いをさらに詳細に調べ,乱流遷移過程の解明に取り組む.
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