Research Abstract |
スピントンネル磁気抵抗効果を利用したトンネル接合膜は,現在,非常に薄い絶縁層膜を均一に作製することが困難であるため,スピントンネル磁気抵抗効果の物理的なメカニズムを解明するうえで障壁になっており,再現性のあるトンネル接合特性を持った高品位の接合膜の作製と系統的な特性評価が求められている.上記の背景のもと,本研究では,(a)1原子層レベルでの結晶成長の制御が可能である,分子線エピタキシー(MBE)法を用いて,高品位なトンネル接合膜の作製手法を確立させ,(b)強磁性層の構成元素,絶縁層の種類と膜厚,エピタクシアル配向面等の設計を変えた高品位なトンネル接合膜を作製し,スピントンネル磁気抵抗特性を評価して系統的な分析を行うことで,物理的なメカニズムを解明し,さらに特性の良い接合膜の実現を目指した. (1)高品位な接合膜の作製手法の確立については,セラミックス単結晶基板について,各種面方位の酸化物単結晶基板を酸素雰囲気中の電気炉内で熱処理し,その後AFM観察を行い,表面平坦化が最も小さくなる熱処理条件を調べた結果,基板傾斜角に依存して表面平坦性が変わること,同じテラス内でもエッジ近傍,中央部,ステップ近傍で平坦性が異なることが明らかになった. (2)層状成長による平坦な超薄膜の作製については,平坦化させた基板上にFe,Co,Niの強磁性層を積層させて,成膜中にRHEEDの強度振動のモニタリングを行い,平坦性を検討したところ,成長温度が高いとクラスター状になりやすく,原子スケールでの平坦性確保には成長温度範囲が限定されるという実験結果が得られた.しかし,今後さらに詳細な検討が必要である. (3)接合をつくるためのメタルマスクの作製とマスク交換のためのMBE装置の改良については,メタルマスクを作製するとともに,MBE装置内でマスクの交換が行えるように,試料搬送システムの改良を行い,正常に稼働させることが出来た.
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