Research Abstract |
まず,ゲノミックサザン解析を行うため,クリ属18種,およびコナラ属,マテバシイ属のそれぞれ約5種について,ゲノムDNAの単離を試みた.しかしながら,ブナ科植物は,葉肉が厚く,ポリフェノール含量が高いため,再現性良く制限酵素消化が可能なゲノムDNAの単離ができなかった.そこでPCR-サザン解析を行うこととした.プライマーには,ニホングリレクチン(CCA)クローニング時に使用した.ミックスプライマーのセットを用いた.また,検出のフローブにはCCAのオープンリーディングフレームほぼ全域に該当するフラグメントを用いた.その結果,'国見'では約2200,1600,1300,900,740bpの位置に5つのポジティブシグナルが得られた.このうち2200,1600,1300bpのフラグメントは,イントロンを持つ全長CCAのイソレクチンを,900,740bpのフラグメントはN-もしくはC-ドメインの一方をコードしている可能性を示唆している.同様の操作を,シバグリ,ヨーロッパグリ,傍士系統のクリに対して行ったところ,シバグリとヨーロッパグリは'国見'と同じパターンを示した.これに対してモーバングリでは900,740bpのシグナルが強く,また400bp付近にもホジティブシグナルを認めた.さらに,傍士系統のチュウゴクグリは多様性に富んでおり,特に傍士354,360,377,445,446および480号では他のクリでは認められない.2800bp付近にシグナルが認められた.これらの結果は,チュウゴクグリには他のクリにはないレクチンが存在している可能性を示唆している.一方,他のブナ科植物では,パターンが大きく異なった.今回解析を行ったイチイガシ,クヌギ,シリブカガシ,スダシイはいずれも1kbp付近にシグナルがあるが,イチイガシを除いては,他にポジティブシグナルは検出できなかった.またイチイガシについても380bp付近にシグナルを認めただけであった.これらの結果は,ブナ科植物にもCCAに類似のレクチンが存在するが,イソレクチンのパターンはクリ属とは大きく異なることを示唆している. 以上の結果は,園芸学会平成13年度春季大会において発表予定である.
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