Research Abstract |
植物レクチンの生理的役割の一つとして貯蔵タンパク説がある.そこで,ニホングリレクチン(CCA)と貯蔵タンパク質のクローニングによって得たcDNAを用い,ノーザン解析によって発現特性を比較した.その結果,貯蔵タンパク質は種子特異的に発現し,また発現時期は登熟後期にピークとなり,その後休眠中も発現を続けたが,発芽時に消滅した.これに対し,CCAは種子,茎,雄花,雌花で発現を認めた.特に種子では登熟初期から高レベルの発現を維持し,休眠中にややレベルは低下するが,発芽時に再度高レベルで発現した.以上の結果から,CCAはその発現特性が貯蔵タンパク質とは明確に異なることが明らかになった. 一方,前年度の,PCR-サザン解析から,ニホングリのレクチンをコードする遺伝子がイントロンを持つと推定したが,プローブの純度を高めて精査した結果,イントロンは持たないことが明らかになった.従ってこれまで用いていたプローブに問題があることから,プローブの再調製を行った.またPCRを行う際のプライマーも,これまでのCCAの配列に基づくN, Rに加え,他のジャッカリン関連レクチンの塩基配列を参照し,新たにJF, JRのプライマーをデザインした.これら2組のプライマーセットと再調製したプローブを用いて,12種のブナ科植物に対してPCR-サザン解析を行った.その結果,ブナ属(ブナとイヌブナ)を除くブナ科植物全てについて,ニホングリと同一のパターンを示した.特に,N, Rのプライマーセットで同一のパターンを示したことから,これらはニホングリ同様二つのドメインからなるレクチンであると推察される.ブナ属については,PCRでの増幅は認めたが,サザン解析でのシグナルが極めて弱かった. 以上の結果から,、ブナ科植物は,ブナ属を除き,ニホングリのレクチンと類似したレクチンを有し,これは発芽や受精の際に重要な役割を担っていることが明らかになった.さらにブナ属では,他のブナ科植物とは異なったレクチンがぞんざいする可能性が高いと考えられる.
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