2001 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸カルシウムの結晶形成を制御する新規活性物質の探索
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12876025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 寛道 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60134508)
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Keywords | 炭酸カルシウム / ニジマス / シロサケ / コラーゲン / カルシウム結合能 / 耳石 / 結晶多形 / 基質糖タンパク質 |
Research Abstract |
魚類の耳石は炭酸カルシウムを主成分としてわずかな有機物を含む。この有機物が耳石形成に重要であることが樺されているが、その実体ま不明であった。われわれはニジマスとシロサケを用いて耳石から可溶性の糖タンパク質(OMP-1)と不溶性の糖タンパク質(otolin-1)を精製し、最終的にcDNAクローニングによってそれらの一次配列を明らかにした。OMP-1は見かけの分子質量は55kDa、otolin-1のそれは100kDaでそれぞ既知のタンパク質であるメラノトランスフェリンおよびコラーゲンに類似していた。0MP-1はnativeゲル電気泳動上では^<45>Caとの結合は認められなかった。otolin-1は不溶性画分から界面活性剤を用いて抽出したため、変性している可能性が高いと考えられたので、同様の実験はできなかった。そこで、不溶性画分全体を^<45>Caとインキュベートしたところ、結合することがわかったが、otolin-1に結合能力があるかどうかはわからなかった。可溶性画分および不溶性画分を用いて炭酸カルシウム結晶化におよぼすこれら、2つの糖タンパク質の効果を調べたところ、対照では典型的なカルサイトの結晶ができたのに対して、不溶性画分を存在させると角のとれた結晶が多数認められた。また、可溶性成分と不溶性成分を同時に存在させると、角は完全に消失し、ひだ状のシートを形成した。しかし、これらはいずれもカルサイトであった。このように、共存有機物が結晶の形を変化させることが明かとなった。また、可溶性成分はin vitroの灰酸カルンウム結晶形成阻害実験において強い阻害活性を示した。以上の結果は、炭酸カルシウム結晶形成ひいては耳石形成に基質糖タンパク質が関与していることを強く示唆した。
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