2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12876036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 善親 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90087594)
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Keywords | 光合成 / 脂肪酸不飽和化酵素遺伝子 / ストレス / 樹木 |
Research Abstract |
本研究は、生体膜を構成する脂質の脂肪酸のうち、18:2脂肪酸を18:3脂肪酸に酸化する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子に注目し、クスノキからこの遺伝子を単離し、その遺伝子発現が光合成活性にどのような影響を与えるか、さらに環境ストレスによってどのように制御されるかについて、分子生物学的に明らかにすることを目的に行った。 まず、クスノキからω-3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のクローニングを試み、2種類のクローン(ChFAD7-1、ChFAD7-2)を単離した。次に、これら2種類の遺伝子のmRNA発現解析を行った。単離した2種類の完全長cDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸配列は、草本植物のω-3脂肪酸不飽和化酵素のアミノ酸配列と比較して、60-70%の相同性を示した。また、N末端側には、細胞質で合成されたポリペプチドの葉緑体(プラスチド)への移行に必要なトランジットペプチド様のアミノ酸配列が存在することが明らかになった。これまでFAD7遺伝子に2種類あるという報告はなく、これらの遺伝子は樹木(クスノキ)に特有のものであると考えられる。 ChFAD7-1遺伝子のmRNAの蓄積は、主に葉でみられ、葉に傷害を与える傷害ストレスによりその蓄積量は著しく減少した。一方、ChFAD7-2遺伝子のmRNAの蓄積は、主に根で観察され、葉における蓄積は極めて微量であった。葉におけるChFAD7-2遺伝子のmRNA蓄積は、傷害処理や低温処理などのストレスによって一時的に増加した。 以上の結果から、クスノキには葉緑体(プラスチド)移行型ω-3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子が少なくとも2種類存在し、それぞれの遺伝子は環境ストレスによって組織特異的な発現調節を受けていることが明らかになった。この研究により、樹木の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の種類と発現は、草本植物と異なることが示された。クスノキにおけるω-3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の温度による発現制御は、クスノキ葉の不飽和脂肪酸含量の季節変化に関与しているものと考えられる。 我々は、葉の光合成測定により、葉肉細胞のCO_2透過性は葉のトリエン脂肪酸含量に依存することを見出した。本研究で単離した2種類の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の過剰発現と光合成活性との関係について、現在、アラビドプシスの変異株を用いて解析している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Murakami et al.: "Trienoic fatty acids and plant tolerance of high temperature"Science. 287. 476-479 (2001)
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[Publications] U.Heber,Y.Kobayasi et al.: "Protection of the photosynthetic apparatus against damage by excessive Illumination of homoiohydric leaves and poikilohydric mosses and lichens"Planta. (In press). (2001)