Research Abstract |
木材がどこから来て,どのように利用され,あるいは再利用され,廃棄されるかを考えるカリキュラムを模索した。この際,最近の大学生は知識と体験との乖離が大きいと言われることから,実体験を重視したカリキュラムとした。履修者は,4回生女子3名,男子2名,修士課程男子2名の計7名であった。カリキュラムは,愛媛大附属演習林において樹木を伐採し製材させて,自分自身が用いる実験に使用させた。伐採木は,実験に必要な寸法の材が得られるように自分達自身で選定させ,チェーンソーおよび斧で伐採後に玉切りして搬出した。玉切りした丸太の製材には,愛媛大附属演習林の簡易製材機を用いた。さらに,実験後の不要木材を用い,炭を焼かせたり,ベンチや掲示板などの簡単な木工品を製作させた。伐採,製材は5月から12月にかけて7回,炭焼きは7月と10月に各1回,木工作は5月から7月にかけて行った。実践終了後,面白かったか,考え方が変わったか,危険を感じたか,身体的に厳しかったかなどを質問し,5段階評価および自由記述にて回答させた。これより,森林での伐採からはじめるカリキュラムが興味をひくものであることがわかった。この反面,チェーンソー操作には危険を感じている人が多いことがわかった。森林での伐採初日に,一人がチェーンソーで足を数針縫う怪我を負ったことが影響したと思われる。今後は,森林での作業に際して安全教育を徹底する必要があろう。 自由記述からは,林業の厳しさを痛感したと同時に,そこから得られる木材の有効利用を真剣に考えるようになったことがうかがえる。さらに,伐採時の周辺環境への配慮も増したようである。以上から,当カリキュラムの目的である持続的森林経営を意識した林産教育について一定の成果が上げられたと考えられる。また,これらの作業は気分転換になるとの回答があり,心理面にも好影響を与えることがわかった。
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