2000 Fiscal Year Annual Research Report
巻き貝をモデルとした軟体動物に起こる内分泌撹乱の作用機構に関する研究
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12876077
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 勇二 東京薬科大学, 生命科学部, 助教授 (20154875)
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Keywords | 巻き貝 / インポセックス / 有機スズ / エストロゲン / 転写調節因子 / エストロゲン受容体 |
Research Abstract |
トリブチルスズ(TBT)等の有機スズ化合物は貝類の船底への付着を阻害する船底防汚剤として優れた特性を有している。しかし、バイガイやイボニシ等の巻き貝へ、また、アワビ類へ深刻な影響を与えている。例えば、日本沿岸の雌の巻き貝に雄性性器(ペニス)が形成する奇形(インポセックス)が発症しており、その原因物質が有機スズであることが明らかにされた。これらの事実は、TBTが軟体動物の生殖腺の成熟を阻害する内分泌撹乱物質であることを示している。申請者は、「TBTによる巻き貝のインポセックスの誘導は、TBTの受容体への結合と、その結合による転写調節因子群の活性化によってもたらされる。」という仮説を導いた。 本研究では上記仮説を検証するため、TBT投与によって生殖腺に発現誘導される遺伝子をDifferential Display法を用いて検索する。発現量が増加する遺伝子の一つとして、生殖腺の発生と分化に関わる転写調節因子が存在すると予想される。 本年度は、メスのイボニシにTBTを投与しインポセックスの発症を確認した。また、内分泌系の重要な構成因子であることが予想されるエストロゲン受容体の分離を試み、ヒトのエストロゲン受容体とアミノ酸配列で約80%一致するイボニシのエストロゲン受容体を単離することに成功した。
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