2000 Fiscal Year Annual Research Report
セリンプロテアーゼ、S8の阻害による関節炎発症抑制の検討
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12877021
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
川市 正史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00195041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 千緒 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (30263445)
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Keywords | 変形性骨関節炎 / フォリスタチン様ドメイン / TGF-βファミリー / セリン蛋白質分解酵素 / 蛋白質分解酵素阻害剤 |
Research Abstract |
(1)抗コラーゲン抗体をマウスに注入して関節炎を誘導した。その組織をS8RNAプローブによるin situ hybridizationと抗S8抗体による免疫染色で観察した。この結果、関節の滑液膜と関節軟骨でS8が産生され、病変した関節軟骨の表面にS8蛋白質が蓄積していた。したがって、S8が関節炎の病態と密接に関連していることが裏付けられた。 (2)Baculovirusを用いて産生されたマウスS8蛋白質が蛋白質分解活性を持つことを明らかにした。この分解活性は、活性中心と予想される328番目のセリン残基をアラニンに変えることにより完全に消失した。蛋白分解活性を有するリコンビナントS8はカゼインを数個の明瞭な断片に分解できることが分かったため、断片の末端のアミノ酸配列を分析し、切断のアミノ酸配列特異性を決定することが可能となった。 (3)ヒトのS8蛋白質に対するモノクローナル抗体を作成することに成功した。この抗体は腹水として大量に調製することができ、しかもマウスのS8とも交叉反応が可能なため、マウスに注入して関節炎誘導への効果を検討することが可能となった。また、ヒトの変形性骨関節炎の免疫組織的解析と血液中のヒトS8のELISA測定に用いることが可能と考えられる。 (4)Baculovirusで産生したリコンビナントS8蛋白質を用いてTGF-βファミリーの種々の増殖分化因子との結合を検討した結果、S8は広範な因子と結合できるが特にTGF-βと強く結合することが分かった。また、S8はTGF-βが受容体に結合して誘起するシグナル伝達を阻害できることが分かった。TGF-βは骨内に大量に蓄積され骨代謝に機能しており、S8と骨代謝の密接な関連をさらに裏付ける結果となった。
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