2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12877024
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
阪本 英二 国立循環器病センター研究所, バイオサイエンス部, 室長 (40291067)
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Keywords | 心筋症ハムスター / アルビノ / 加齢 |
Research Abstract |
人間を含む哺乳類の眼や皮膚にはメラニン色素の沈着が起こるが、この色素の個体自身に対する働きは興味深い。皮膚の色素が紫外線発癌に対する防御作用を有することはよく知られている。では、眼の色素はどのような働きをするのであろうか。本研究では、申請者自身が原因遺伝子を解明した遺伝性心筋症のモデル動物(心筋症ハムスター)が合併する、ユニークな遺伝性白子症(色素欠損症)に着目し、眼球色素の視覚機能における働きの解明を目指す。 心筋症ハムスターは全身の白子症を合併するが、面白いことに眼色が加齢と共に徐々に赤から黒に変化する。通常の白子症では網膜の動脈血が透けて見え、一生赤眼である。心筋症ハムスターにおける眼色のユニークな変化は、心不全による不十分な酸素化により動脈血が黒色化するため、と一般に考えられてきた。しかし申請者は、何らかの原因で眼に徐々に色素沈着が起こるのではないか、もしそうであるならこのモデル動物を活用し、眼における色素の働きを解明できるのではないか、と考えた。 まず眼球切片を光学顕微鏡で観察したところ、心筋症ハムスターの網膜色素上皮および脈絡膜には予想通り加齢と共に漸増的な色素の沈着を認めた。そこで次に、メラニン色素生合成の律速酵素であるチロシナーゼを多方面から解析した。免疫組織化学ならびに酵素組織化学法により、肉眼的色素沈着を認めない生後6週の心筋症ハムスターにおいても、網膜色素上皮ならびに脈絡膜に正常と等量のチロシナーゼタンパク質が存在するが、その活性は極めて弱いことを見い出した。RNAブロット解析により、心筋症ハムスターの眼には正常と等量のチロシナーゼ遺伝子の発現を認めた。以上のことから、心筋症ハムスターの眼が加齢と共に黒くなるのは、チロシナーゼの比活性の低下が原因と考えられた。今後、その遺伝子を詳細に解析する予定である。
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[Publications] TCMIE KAWADA,YOKO NAKATSURU,AIJI SAKAMOTO, et al.: "In Vivo Gene Supplementation for the Therapy of Cardiomyopathy"Heart Failure (Springer-Verlog Tokyo 2000). 199-208 (2000)