2000 Fiscal Year Annual Research Report
p53とNF-κBのクロストークによる放射線誘発アポトーシスの制御
Project/Area Number |
12878093
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 文男 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (10019672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 浩彦 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (30261895)
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Keywords | 放射線 / マウス胸腺腫由来細胞 / アポトーシス / 転写因子 / 転写コアクチベーター / p53 / p300 / Cdk2 |
Research Abstract |
マウス胸腺リンパ腫由来3SB細胞のX線誘発アポトーシスには、がん抑制遺伝子産物p53の発現上昇とNF-κBの機能低下が起こり、このようなp53とNF-κBの相反反応はp53ノックアウトマウス由来の胸腺細胞においても観察されている。本研究では、放射線誘発アポトーシスにおける両者の関与、特にp53とNF-κBに介在する共通の因子を同定し、これらのクロストークの実態を明らかにする。 まず、p53が機能しているヒト舌癌由来SAS/neo細胞と変異型p53遺伝子を導入したSAS/mp53細胞を用いて、X線照射後のp53及びNF-κBの発現について調べた。その結果、X線照射によりSAS/neo細胞ではSAS/mp53細胞に比べて高い頻度でアポトーシスに特徴的な核変化を起こした細胞が出現し、p53やp21タンパク質も蓄積することがわかった。しかし、これらの細胞ではNF-κBの発現が低く、X線照射後の発現量や機能変化について解析することは不可能であった。そこで3SB細胞を用いて、転写コアクチベーターp300に関わる因子について調べることにした。既に、p300はp53とNF-κBの両方と結合すること、さらにその活性はサイクリン依存性キナーゼCdk2によって制御されることが報告されている。X線を照射した3SB細胞では、アポトーシス様の核変化に先立ってCdk2によりリン酸化したH1ヒストンが検出され、そのリン酸化H1ヒストン量は照射線量に依存して上昇した。しかし、アポトーシス抵抗性のと突然変異細胞では、Cdk2キナーゼによるH1ヒストンのリン酸化は観察できなかった。最近、Cdk2は転写因子E2F-5を強力にリン酸化し、その結果E2F-5がp300と結合して転写活性化能を示すようになることが証明された。このことは、X線照射された3SB細胞内ではCdk2の活性化によりp300が欠乏状態になることを意味している。つまり、X線照射後に見られたNF-κBの機能失活は、p53の蓄積に加えCdk2の活性化に起因していることを示唆する。
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Research Products
(2 results)