2013 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトにおける農業政策と食料安全保障に関する研究
Project/Area Number |
12F02012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久野 秀一 京都大学, 経済学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASHRAF Solyman 京都大学, 経済学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | エジプト / 農業政策 / 食料安全保障 / 農業構造 / 食料への権利 / 食料主権 / 農村開発 |
Research Abstract |
本研究は、これまで国民経済ないし家計レベルで専ら経済的・技術的な指標から食料確保のあり方を論じてきた「食料安全保障」概念の限界を踏まえ、新たに「食料への権利」や「食料主権」等の概念を取り入れることによって、エジプトにおける新自由主義的な農業政策がいかに食料不安を高め、農村と都市の貧困問題と社会不安に帰結してきたかを明らかにすることを目的としている。具体的には、①文献調査を通じて関連諸概念の意義と限界を明らかにする。②エジプトの農業食料政策の変遷と農業食料をめぐる各種指標との相関関係を、統計資料等を用いながら国際比較的視点から明らかにする。③エジプトの食料安全保障に関する関係者・関係機関の認識と展望について、食料安全保障に不確実性を伴う東アジア諸国とも比較しながら、ヒアリング調査等を通じて明らかにする。④以上の調査研究の成果を国内外の関連学会で発表する。 平成25年度は前年度の基礎作業を踏まえ、エジプトにおける農業政策と食料安全保障の関連性を歴史的・構造的に把握するのに必要な分析視角と方法論を確立するため、世界各国・各地域を事例に取り組まれている既存研究のサーベイを進めるとともに、エジプト農村部における家計および農村コミュニティの次元での食料不安(food ihsbcurity)への対応に関する農家ヒアリング調査を実施するための準備を進めた。しかしながら、エジプト国内の情勢が不安定なため、現地の研究協力者を通じて農家ヒアリング調査を進めることにした。なお、日本国内の関係機関・関係者へのヒアリング調査も計画していたが、日程調整の関係で、平成26年度中に実施することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外国人特別研究員の受入研究者である研究代表者が学内における部局横断型の大型教育研究プロジェクトの中心メンバーとなったため、十分なケアができなかったことが主たる理由であるが、それに加え、対象地域であるエジプト国内の政治的混乱と社会経済的不安が続いているため、予定していた現地調査を断念し、現地研究協力者への調査委託を通じて間接的に実施せざるをえなくなったことも影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年3月から6月の間に実施を予定している現地研究協力者による農家調査の結果を集計しながら、前年度までに進めてきた食料安全保障に関する理論的分析枠組みと政策的な動向分析を踏まえた研究論文の執筆を最優先に進める。 外国人特別研究員の滞在期間中に国内外の学会で報告する機会を逸したが、部局内で研究会を開催するとともに、研究代表者が別に助成を受けている科研基盤研究Bのプロジェクト研究会の場などを活用しながら、本研究の成果を関連分野の研究者と共有する。また、成果論文を国際学会で発表するとともに、それを国際学術誌に掲載するための努力を、滞在期間終了後も続ける予定である。
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