2012 Fiscal Year Annual Research Report
極端に低い地温勾配下で形成された(超)高圧変成岩を用いた深部流体活動の解明
Project/Area Number |
12F02026
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 崇男 京都大学, 理学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OROZBAEV Rustam 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 体流部深 / Makbal Complex,キルギス / ローソン石 / 多相固体包有物(MSI) / LA-ICP-MS |
Research Abstract |
極端に低い地温勾配下の沈み込み帯での深部流体活動の実態解明を目指して、以下の4つの研究(野外調査、岩石学的研究、多相固体包有物(MSI)の微量元素分析、流体包有物の抽出)を実施した。各々の概略を以下に記す。 1)野外調査:2012年8月15日陶9月2日まで、キルギス共和国Makbal Complexで野外調査を実施した。今回の調査によって、超高圧変成岩ユニットは複数の時期に流体活動を被ったことを確認するとともに、各時期の深部流体研究のために石英脈とその母岩の変成岩を採集した。 2)岩石学的研究:Makbal Complex産のタルク・ザクロ石・クロリトイド片岩のざくろ石や基質には、緑簾石+石英±藍晶石±Na雲母から成るMSIが多数含まれていることを見出した。MSI構成鉱物のモード比とそれらの平均化学組成から復元したMSI全体の化学組成はおおむねローソン石に一致した。これらのデータを基に、上記MSIは超高圧下ではローソン石であったが、岩体が地下60km(2Gpa)程度まで上昇・減圧した際にローソン石がMSI構成鉱物に分解するとともに、相当量の流体が上昇する超高圧変成岩から放出されたとの考えを提示した。この所見は第34回万国地質学会(オーストラリア)・日本鉱物科学会年会(京都)などで講演し、世界の研究者と意見交換を行った。 3)MSIの微量元素分析:LA-ICP-MSを用いてタルク・ザクロ石・クロリトイド片岩中のMSI中の緑簾石の微量成分分析を行った。その結果、緑簾石に含まれる微量元素と希土類元素の濃度構成はローソン石の文献値に極めて似ており、上記の仮説を裏付けることになった。 4)流体包有物の抽出:Makbal Complexで採集した石英脈などから、クラッシュリーチング法を用いてに流体包有物を分離した、微量元素の分析を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Makbal Complex産のタルク・ザクロ石・クロリトイド片岩のざくろ石や基質に含まれる緑簾石+石英±藍晶石±Na雲母からなる多相固体包有物(MSI)の主要元素ならびに微量元素組成から、MSIは超高圧時に安定であったローソン石が岩体上昇時に減圧過程でMSIに分解したことを示唆する。この発見は地下60kmの沈み込み帯でこれまで注目されていなかった新たな脱水原因が存在することを示している。この新知見は今後、地震学者からも注目を集めると予想される。
|
Strategy for Future Research Activity |
Aktyuz及びMakbal地域の高圧変成岩を用いて流体包有物のmicrothermometry, Raman Spectroscopyなどの実験を継続する。2013年9月イタリアで開催される、国際エクロジャイト会議に参加し、キルギス産地下深部岩に関する研究発表を行うと共に、世界の研究者と地下深部流体研究に関する意見交換を行う。Pseudosection modelingを開始し、各岩帯での多様な深度における脱水給水量の定量化をこない流体活動史を取りまとめる。それを基に、地下深部物質の上昇メカニズムに対し、地下深部流体が果たす役割を考察する。
|
Research Products
(3 results)