2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体材料のナノ構造エンジニアリングを駆使した高効率水の酸化光アノードの開発
Project/Area Number |
12F02031
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
八木 政行 新潟大学, 自然科学系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHANDRA Debraj 新潟大学, 自然科学系, 外国人特別研究員
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Keywords | メソポーラス材料 / 水の酸化 / 光アノード / ナノ構造 |
Research Abstract |
【緒言】酸化チタン(Tio_2)は安定なn型半導体光触媒として広く研究されている。酸化タングステン(WO_3)は酸性条件下で光腐食耐性のn型半導体であり、そのバンドギャップは2.5~2.7eVとTiO_2よりも低いため、可視光で駆動する光触媒の開発が期待される。しかしながら、WO_3の光触媒や光電気化学特性の研究はTio_2に比べ非常に少ない。本研究では、WO_3ナノパウダーを用いて作製したWO_3膜の光電気触媒活性を研究した。 【結果と考察】WO_3ナノパウダー懸濁液に増粘剤としてPEGおよびマーポローズを加えた前駆体ペーストをITO基板上に塗布し、WO_3膜を焼成することで作製した。WO_3膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像から粒径100nm程度のWO_3粒子が集積したナノポーラス構造が観察された(Fig.1)。リン酸バッファー(pH=6.0)中におけるWO_3膜のCVでは、-0.2V~1.0V vs.Ag/AgClの掃引範囲で暗時ではアノード電流は見られなかったが、100mWcm^<-2>の可視光を照射すると、0.2V付近から水の酸化に基づく光アノード電流が立ち上がり、1.0Vで1.76mAcm^<-2>に達した。0.5Vの定電位下で可視光を照射して水の光電気化学的酸化を行った。開始1分後に0.7mAcm^<-2>の光電流を示したが、1時間後には0.37mAcm^<-2>(53%)まで減少した。0.1mMのCo^<2+>イオンを含むリン酸バッファー中、同条件のCVでは、1.0Vでの光電流は1.2倍増大した。水の光電気化学的酸化における光電流は、開始1分後に0.82mAcm^<-2>を示し、1時間後でも0.71mAcm^<-2>(87%)であったことから、Co^<2+>イオンの添加による光電流の安定性の向上が示された。酸素発生におけるファラデー効率も向上したことから、Co^<2+>イオンがWO_3膜の表面で水の酸化触媒として作用したため、光電気触媒活性が向上したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メソポーラス酸化チタンおよび酸化タングステンを合成するための新規構造制御有機テンプレート剤を効率よく合成できた。構造制御有機テンプレート剤として、長鎖アルキル基を有する2-ピリジルメチルアミンキレート分子、および親水部と疎水部を有するブロック共重合体の合成が計画通りに進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
〈n型金属酸化物半導体のメソポーラス構造制御による光酸素発生アノード特性の向上〉 合成した種々の新規構造制御有機テンプレート剤を用いて、メソポーラス構造を有する無機色素吸着酸化チタンや酸化タングステンなどのn型金属酸化物半導体を合成する。メソポーラス構造を形成させるためには、窒素下で有機テンプレート剤を炭化させた後、酸素下で完全分解する過程が必須である。従って、本年に、ガス雰囲気切り替え付電気炉(88万円)を購入する予定である。X線回折測定、表面積測定および透過型顕微鏡観察によりこれらの金属酸化物のメソポーラス構造を同定する。これらの機器分析測定装置使用料の多くは外部に発注するため、その費用をその他の経費に計上した。メソポーラスn型金属酸化物半導体の合成条件を検討するとともに、これらの電極作成条件の最適化を図る。光酸素発生アノード特性と酸化チタンナノ構造との関係を明らかにして、高効率な可視光駆動型光酸素発生アノードを開発する。
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