2012 Fiscal Year Annual Research Report
マダニ唾液腺分子の機能解明と病原体伝播に果たす役割
Project/Area Number |
12F02217
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
辻 尚利 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ANISUZZAMAN 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 外国人特別研究員
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Keywords | マダニ / 唾液腺 / ロンギスタチン |
Research Abstract |
マダニには個体レベルで精妙に展開される寄生・血液消化・飽血などの吸血行動を支える器官として、唾液腺や中腸が重要な役割を果たしている。また、これら器官は、人獣の病原体を伝播するベクターとして、病原体の分化・増殖に深く関与することが見出されてきている。本研究では、国内最優占種マダニのフタトゲチマダニを用いて、唾液腺で産生される蛋白分解酵素とそのインヒビターに焦点をあて、これら生物活性分子(TBM)の機能解明を通して得られるマダニ特有の機能・構造に立脚した抗マダニ薬及びバベシア症ワクチンなど、マダニの寄生とバベシア症に対する制圧技術を開発する。本年度は唾液腺TBMからの蛋白分解酵素とそれらの内在性インヒビターを複数同定し、その中からマダニ吸血行動の特徴である「持続吸血」を支えるロンギスタチンの機能解析を実施した。フィブリノゲン変性とプラスミノーゲンをプラスミンに活性化するロンギスタチンは、宿主の炎症反応を制御するRAGE(receptor for advanced glycation end prodcuts,終末糖化産物受容体)と濃度依存的に結合することが分かった。膜鎖RAGEのVドメインと結合するロンギスタチンは、市販のRAGEと濃度及びカルシウム濃度依存的に競合結合することが確認された。ロンギスタチンとRAGEの相互作用はNF-κB転移を阻害し、正常ヒト隣帯静脈内皮細胞におけるTNF-α、cox-2、IL-4発現を下方制御することが分かった。ロンギスタチンノックダウンマダニを接着・吸血させたマウスの皮下組織では、炎症性細胞の集積が確認され、TNF-α発現は有意に増加することも判明した。免疫組織学的解析によって、炎症性細胞の出現が抑制されることが確認された。ロンギスタチンはRAGEのアンタゴニストとして作用し、NF-κBを介して炎症性サイトカインの発現を抑制するものと考えられた。マダニの持続吸血は、こうしたロンギスタチンによる一連の働きによって行われていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フタトゲチマダニの唾液腺より分離したロンギスタチンの機能解明によって、マダニの持続吸血を支える機能分子としてロンギスタチンが重要な役割を果たしていることを突き止めた。
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Strategy for Future Research Activity |
マダニの持続吸血に必要な宿主皮下組織のBlood-pool(血液貯留庫)の形成・維持に、ロンギスタチンが必須であることが分かった。引き続き、組織学的及び免疫学的機能解析を活用して、吸血行動におけるロンギスタチンの役割をさらに明らかにする。
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Research Products
(4 results)