2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DAVIN Setiamarga 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 系統ゲノム学 / 頭足類 / 軟体動物 / 環境変遷 / トランスクリプトーム / アコヤガイ / シグナル伝達因子 / 進化古生物学 |
Research Abstract |
本年度は、サンプルの採取およびRNA抽出を主に行った。計画した10種のうち、6種(コウイカ、ヒメコウイカ、トラフコウイカ、ミミイカダマシ、マダコ、オウムガイ)の生体標本の入手に成功し、それらの標本から転写RNAの抽出を行った。今後これらのRNAサンプルをもとに、順次次世代シーケンサーによるトランスクリプトームデータの取得を行う計画である。また、本年度は、本研究の系統ゲノム解析における外群として用いる二枚貝類アコヤガイについて、そのゲノムにコードされている発生関連の遺伝子のアノテーションを行った。昨年度ゲノム概要配列が解読されたアコヤガイにおいて、特に体軸形成などの初期発生過程で重要な役割を持つFGF、Hedgehog、PDGF/VEGF、rGFβ、Wntファミリー等のシグナル伝達に関与する遺伝子を同定し、他の冠輪動物、脱皮動物、後口動物のゲノムで同定されている相同遺伝子との比較を行うことで、これらの遺伝子ファミリーの進化過程における各遺伝子の獲得(重複)、欠失等のイベントを復元した。そのような復元を通して、アコヤガイゲノムがこれらの遺伝子に関して、冠輪動物や左右相称動物の祖先が持っていた祖先的遺伝子セットをほぼそのまま保持していることを明らかにした。また、この結果から、アコヤガイゲノムが、今回系統ゲノム解析を行う同じ軟体動物の頭足類のゲノムを調べる際のレファレンスとしてあるいは外群として有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度実施計画だった次世代シーケンサーによる配列解析を開始することができなかったため。これは使用予定だったシーケンサーよりも桁違いに性能のよいシーケンサーが登場し、その新機種による解析が軌道に乗るまで分析を行わなかったことにも起因する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後1年間、サンプル採取を継続して行い、既に調整したRNAサンプルから順次シーケンス解読を行う計画である。 今年度末にはシーケンスデータをそろえ、順次系統解析や分岐年代推定など分子進化系統学的解析を行う。本研究を実行する際に直面する問題としては、以下の二つがあげられる。(1)珍種の入手、(2)配列解読に用いるシーケンサーの急速な進歩である。(1)に関しては、世界中の頭足類研究者と共同研究を行い、サンプルを分けてもらうことで解決する。問題(2)は、喜ばしいことでもあるが、どのタイミングで分析を行うのがよいか悩ましくもある。東京大学のオーミクスセンターとも相談し、その時々でベストな方法・機種を選択していきたい。
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