2013 Fiscal Year Annual Research Report
生きたマウスでp53からATMへのフィードバックループの動態を解析する
Project/Area Number |
12F02415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 道行 京都大学, 生命科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CANDEIAS Marco Marques 東都大学, 生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | p53 / ATM |
Research Abstract |
p53遺伝子は、初めて同定された癌抑制遺伝子であり、ヒトの悪性腫瘍において最も高頻度に異常が認められている。p53遺伝子のタンパク質産物であるp53は、細胞が遺伝子損傷を受けると、細胞周期の停止や、アポトーシスを引き起こす。p53は、ATMやATRのようなDNA損傷を感知するキナーゼにより、直接的に、あるいはchk2を介して間接的に活性化される。近年、放射線ストレスによってp53の活性が周期的に振動していること、また周期的なp53の活性化が細胞の運命決定と関連していることが報告された。またp53の周期的な活性化サイクルには、p53-ATM間のネガティブフィードバックが関与していることも示されている。しかし、p53-P53-ATMのフィードバックの分子機構は未だ明らかになっていない点が多い。そこで本研究では、FRETバイオセンサーとライブイメージング技術を用いp53によるP53-ATMのフィードバック制御の分子機構を明らかにすることを目的とした。まず、ATMバイオセンサーを安定的に発現する癌由来培養細胞A549細胞(野生型p53を保持)とA549細胞におけるp53ノックダウン細胞、H1299細胞(p53を欠失)を樹立した。これらの細胞株のATM活性の周期的な時間変化を測定することで、p53-P53-ATMのフィードバックの影響を検討した。その結果、EtoposideによるDNA損傷後、A549細胞ではATMが一過的に活性化された後に基底状態近くまで減少する適応現象が観察されたのに対し、p53ノックダウン細胞、またはH1299細胞ではATMの持続的な活性化が観察された。また、A549細胞で観察された適応現象は、Etoposide濃度に依存することが示された。以上の結果から、p53遺伝子を保持する癌由来培養細胞において、p53-ATMのフィードバック機構が機能していることが示唆された。また、ATM活性の振動の持続時間は細胞密度の影響を受けることが確認された。そして、持続時間を短縮させる因子はPTP1Bであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載の研究はほぼすべて行うことができた。トランスジェニックマウスを用いた研究は現在遂行中であり、プロジェクト終了までには終わらせることができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPTP1Bがどのようなシグナル伝達経路を介し、ATM-chk2-p53経路を制御しているのか検証していく方針である。
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