2012 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災後の復興における「死」を巡るポリティックス:記憶、宗教と国家
Project/Area Number |
12F02702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 岩弓 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BORET Sebastien 東北大学, 大学院・文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 記憶 / 社会的復興 / 死生観 / 震災 / 津波 / ポリティックス / 宗教 / 供養 |
Research Abstract |
本研究では、東日本大震災の被災地におけるフィールドワークを通じた、(1)コトバとして語られる被災者たちのナラティブ分析と、(2)モノとしての慰霊追悼の施設に注目した聞き取り調査を二つの柱として実施した。開始時期が12月という気候的には余り恵まれない時期であったが、インフォーマントたちにとっては外での仕事が少なく、自宅にいることが多かったので、効率よくフィールドワークが行えた。 研究対象として取り上げたのは、東日本大震災による被害が甚大だった名取市閖上である。閖上地区の被害は甚大で、900名を超える死者が出ていた。現地の人々との間の関係を作るため、積極的にBoret君と現地に入るようになったのは1月になってからであった。フィールドにおける最初の調査内容として、身近な人を亡くした悲劇的な出来事の経緯の聴取と、そうした死者を記憶に留める機会ともなる慰霊追悼の機会への参加を目指した。特に、平成25年3月11日に閖上小学校前で遺族団体が開催した丸二年、三回忌のメモリアルに参加したことは有意義であった。その際、参加者の問で「閖上の記憶」という活動が行われていることを知り、そうした人々を通じて、閖上地区のコミュニティー構成員との密接なかかわり合いを持つ機会が生まれた。インフォーマントの語り口からは、記念・追悼行事を行おうとすることの意味や形式についてさまざまな重層性があることを窺い知る言説を聞くことができ、今後の分析に有効な資料となるものと思われる。また更に、被災地の仮設住宅の人々に対する支援活動を行ってきた「連帯東北・西南」という国際支援団体との出会いもあり、Boret君がその活動を被参与観察する許可をもらっている。また2月末には中華生死学会のシンポジウム・研究会に参加し、調査結果の一部を使った萌芽的な研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
閖上の歴史や風土に通じていて、閖上の記憶の多くを語れるインフォーマントが、「閖上の記憶」という施設を中心に活動していることを知った。「研究目的」達成に良いインフォーマントであるため、何度も面談する機会を設けることで、彼から協力を得ることが出来る人間関係が構築され、年度末から貴重な証言を徐々に集めている段階である。こうした状況は当初予想していた通りで、研究の進め方としては順当なものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の二年目は東北大学を拠点に、一次的データの収集や定性分析をする予定である。まずは名取市閖上の記憶やコミュニティーに関して復興や追悼碑に対する市当局・市役所の担当者と面会し、津波の記憶に市が行っている言説や政策を記録することを計画している。また言説の比較研究のためには、インドネシアで2004年に発生した大津波の事例についても調査する予定である。更に、上智大学の島薗進教授と人類学者の山下晋司,上智大学のスレター・デーヴィッド教授などと協力して、研究会も行い、年度末までに、被災者の言説に関する論文を、『東北宗教学』に執筆するつもりである。
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Research Products
(4 results)