2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世における秘密口伝の形成とその思想-天台宗と曹洞宗の交渉を中心に
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12F02731
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大久保 良峻 早稲田大学, 文学学術院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LICHA Stephan Kigensan Dorim 早稲田大学, 文学学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | 天台宗 / 禅宗 / 口伝法門 / 嗣法・伝法 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究は、天台口伝法門が曹洞宗嗣法儀礼に与えた影響と、天台口伝法門における禅宗への批判を中心にするものである。最初に、曹洞宗における嗣法儀礼については、研究は中世曹洞宗相伝資料である「切紙」に基づいて、特に天台宗の菩薩戒言説と顕教灌頂からの曹洞宗伝授儀式作成への影響を明らかにする。そのために「多子塔前伝付之儀式ノ図」という切紙に焦点を合わせることで、その儀式に用いられた要素を浮き彫りにする。このように、先ず、天台宗恵心流の伝授儀式の影響を明らかにし、さらに菩薩戒の基本的な位置を強調する。研究は、曹洞宗中世伝授儀式の特徴とは「伝法」と「授戒」を統一させるということの解明にあり、その具体的、儀式的な伝え方が顕教灌頂を基本とする、という結論を導いた。 次に研究は江戸時代における伝授儀式の変革を明らかにする。つまり、卍山、面山等に創められた改革運動である宗統復興は、その活動領分が伝授儀式をも含み、中世の儀式の基本である禅戒一統を批判し、儀式的にも分別し、顕教灌頂の要素を粛清した。そのために、新しい伝授儀式も作られたことを示した。 次に天台口伝法門における禅宗への批判については、研究は『天台一宗超過達磨章』を挙げる。良助法親王の著書とされる『天台一宗超過達磨章』は、大覚寺で院政を行う後宇多法皇の前で、良助と三人の禅僧との間に起こる架空的な問答を記録する資料である。その良助の禅宗への批判は、当時の資料と比べると非常に詳細な言説であり、さらに他にあまり見られない内容も出て来るのである。研究は中国天台宗にも見られる禅宗への批判と、円爾弁円(1202-1280)の禅説までに遡れる背景の検討という二点を中心にするのである。 この研究により、近代初期における禅宗と天台宗の問に起こる論争の理解を一歩進めることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
問題が起こってなく、資料調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は研究計画の通りに進む。
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Research Products
(2 results)