2012 Fiscal Year Annual Research Report
シロガオオマキザルにおける近親者共在の群れ間移出入パターンと適応度へ及ぼす影響
Project/Area Number |
12F02739
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 正二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WIKBERG EvaC. 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 新世界ザル / 霊長類 / 群れ間移出入性差 / 父子関係 / 血縁度 / 遺伝的集団構造 / マイクロサテライト / STR |
Research Abstract |
我々はコスタリカ・サンタロサ国立公園の野生シロガオオマキザル4群88個体からの糞由来DNA327試料に対し、13座位のShort Tandem Repeat(STR)(マイクロサテライト)多型遺伝マーカーの遺伝子型判定を行ない、4783個のアレル長遺伝子型判定結果を得た。糞や毛髪などの不良条件DNA試料は非侵襲的に収集できるメリットがあり、保全生物学や分子生態学、集団遺伝学の諸分野で広く使われている一方で、低濃度不良条件のために、2つのアレルのうちの片方がもう片方に比べて過小にしか増幅されず、ヘテロ接合の遺伝子型を誤ってホモ接合と判定してしまう、いわゆるアレルドロップアウトという問題が生じるおそれがある。そこで我々は糞由来などの低濃度、不良条件のDNA試料から遺伝子型判定を行なう際にその信頼性を検証するために従来用いられてきた方法よりも、正確で時間・労力の上でも効串のよい方法の開発も試みている。従来法は抽出DNA溶液の濃度に応じてホモ接合であることを確認するために何回の反復実験(PCR)を行なうべきかの指針を与えている。もともとこの方法はチンパンジーの糞試料を対象として開発されていたが現在では広く様々な種に用いられている。しかし、アレルドロップアウトの起こりやすさは生物種、遺伝子/ゲノム領域、PCRのプロトコルによって様々に異なっていると考えられる。そこで我々はヘテロ接合であることがわかっている試料に対してDNA濃度とドロップアウト頻度の相関をマーカー座位毎に求めることで、必要なPCR実験の反復回数を設定することとした。これにより従来法に比べ正確性が向上し、必要な反復回数も劇的に減少できた。これは特に低濃度の希少試料での実験に大変有用である。我々は現在この改良法を論文発表すべく原稿準備を進めている。この他にも、ここまで得られた遺伝子型判定結果を用いて遺伝的集団構成に関する論文と群れ間移出入に伴う子殺しに関する論文の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始が11月でありわずか5か月足らずの時間しかなかったため研究発表はないが、これは想定のことである。それよりもこの短期間に多くの遺伝子型判定と過去の研究室の遺伝子型判定結果の見直しを遂行し、方法論の開発も進んできている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた遺伝子型データを用いて次年度はこれらのオマキザル集団における父子関係、個体間血縁度、遺伝的集団構成の解析を行ない、論文発表を行なう。また、4月から48日間海外調査に赴き、コスタリカでさらなる糞試料収集を行なう。
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Research Products
(1 results)