2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いた環境調和型炭素-炭素、炭素-ヘテロ元素結合生成反応の機構研究
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12F02790
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 正治 京都大学, 化学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GOWER Nick 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機鉄化合物 / 反応機構 / 放射光X線吸収スペクトル / 鉄触媒 |
Research Abstract |
現在,日本を含め世界中の多くの研究グループが,鉄錯体触媒を用いた精密有機合成反応の開発研究に取り組んでいる.これは,鉄という元素の持つ,普遍性,低毒性,低環境負荷性,廉価性から次世代の有機合成触媒として期待を集めている為である.一方,鉄錯体および有機鉄化合物は,多様な酸化状態,配位状態,スピン状態を取り得るためその精密制御は必ずしも容易ではなく,現在も試行錯誤による反応開発が行われている.本研究では,有機合成化学において重要な炭素一炭素結合生成反応および炭素-ヘテロ元素結合生成反応について反応溶液のX線吸収分光スペクトルによる解析を速度論研究と並行して行い,さらに,不安定な有機鉄化合物の単離および科学反応性の精査を行うことで,これらの反応の機構を明らかにする.さらに,ここで得られた知見をもとに,触媒的不斉合成反応を含めた新規鉄触媒合成反応の開発を最終的に行う。H24年度は炭素一炭素結合生成反応としては,オキサビシクロアルケン類に対する有機亜鉛反応剤のジアステレオ選択的な付加反応に対して,特別研究員がこれまで取り扱ってきたアリール鉄(1)ホスフィン錯体を化学量論量および触媒量用いた反応を行い,活性種としての可能性を精査した。その結果,一価の鉄(1)ボスフィン錯体は予想した反応性を示さないことが明らかとなった。同実験と並行して反応溶液のその場放射光X線吸収スペクトル測定の予備実験をSPring-8にて行い,類縁反応系において,有機鉄活性種が二価の酸化状態であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度に予定していたSpring-8における放射光X線吸収スペクトル実験を,鉄触媒のクロスカップリング反応をモデル反応として予定より早く行うことに成功した。これによって,本年度のカルボメタル化系,1,4付加反応系での反応機構解析を予定より早く進める事が可能となった。以上の理由から,当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
光学活性配位子を用いた不斉カルボメタル化反応および不斉1,4付加反応の開発も行い,これらをプローブとして反応機構解析を行うと同時に,合成的に魅力的な炭素一炭素結合性生成反応の開発に繋げる予定である。
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