2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中塚 憲章 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁気配向 / β-FeSi_2 / 組織制御 / 磁気異方性 / 焼結 / 単結晶 / 材料プロセス / 微粒子 |
Research Abstract |
本研究では、斜方晶FeSi_2を対象とし、磁化を利用して単結晶微粒子の結晶方位を三次元的に制御したバルク体の作製を可能とするプロセス原理の構築を目指している。これは、材料特性の向上のみならず、新たなバルク単結晶の作製手法の創成につながると期待される。 磁場を利用した三次元的な結晶方位制御の原理は既に明らかにされており、いくつかの系で実現されている。しかし、それらは粒子を樹脂中に分散させており、目的物質の特性を発現させることはできなかった。そこで、本年度は磁場中スリップキャストにより、三次元的に配向した粒子からなる凝集体の作製および、作製した凝集体を通電焼結することにより、三軸配向組織を有する焼結体の作製を目指した。 三次元的な結晶方位制御に必要な異方的な磁場(楕円磁場)は、磁場中で試料を一定の速さで回転させ、その回転方向を周期的に変化させることで実現した。FeSi2粒子をエチレングリコール中に分散させ、印加磁場強度:10T、回転速度:12rpmの条件で、回転角を変化させながら凝集体を作製し、配向の様子をX線回折を利用して測定した。三軸配向は回転角が90。から170°の範囲で達成され、90°以下では静磁場を印加した場合と同様な傾向を示した。一方、粒子を樹脂中に分散させた場合は回転角が10°から170°の範囲で三軸配向を達成している。用いる流体によって、三軸配向に適した磁場環境がことなることが明らかとなった。また、作製した凝集体を通電焼結装置を用いて焼結することで(保持温度:900℃、保持時間:30分、印加圧力:50MPa)、三軸配向組織を有する焼結体(充填率:84%)の作製に成功した。これにより、三軸配向組織を有する焼結体の作製が可能であることが実証的に明らかになった。今後は、隣接する粒子同士の傾角や粒界に形成される組織等に着目し、材料特性との関係について研究をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は磁場中スリップキャストにより、粒子の配向を保持した凝集体の作製を目的としていた。それに対して、本年度は、凝集体作製の次のステップである三軸配向組織を有する焼結体の作製まで成功している。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、三軸配向組織を有する焼結体の充填率は約84%である。今後は、焼結体の充填率の向上に取り組む予定である。磁場を利用して作製された一軸配向組織を有する焼結体では、焼結に伴い配向度が上昇することが知られている。本研究においても、焼結体の緻密化あるいは粒子の粗大化の過程で配向度がどのように変化するのかは、非常に興味深い。特に粒成長の過程を粒子スケールでの結晶方位分布と関連して理解したいと考えている。そこで、EBSPなどを利用してミクロスケールでの配向度を評価する予定である。また、三軸配向組織を有する焼結体の配向度や粒界に形成される組織・欠陥が材料の特性にどのような影響を与えているのかは、さらに興味深い課題である。本研究では斜方晶FeSizの熱電特性や光学特性に着目してこれらの関係を調査する予定である。
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