2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00070
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 英一 慶應義塾大学, 総合政策学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | インドネシア / 9・30事件 / 虐殺 / 村落社会 / 恐怖の文化 / 社会史 / オーラル・ヒストリー / 開発独裁 |
Research Abstract |
本年度は、複数の種類の資料やフィールドノートをもとに、1965年にインドネシアの首都ジャカルタで発生した9・30事件というクーデター未遂事件を契機に、調査村の村人同士が殺し合った記憶と和解の経緯を民族誌として編みました。 具体的には、論文を査読誌(『アジア太平洋レビュー』第10号、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター)に発表しました。まさにこのテーマを扱った、今月に日本でも公開予定の長編ドキュメンタリー『The Act Of Killing』が、英アカデミー賞を受賞するなど世界各国の映画祭を席巻していますが、本研究の社会的研究意義を示しているといえるでしょう。 また、上記の事例研究の成果を、他地域の事例を比較することで、私たちは過ぎ去らない過去にいかに向き合うことができるのかという歴史和解の問題を理論的な側面から検討することを試みました。 具体的には、日本社会のなかにおける歴史になりきらない過去として、戦犯の問題を取り上げ、新書(『戦犯の孫―「日本人」はいかに裁かれてきたか―』新潮社)として刊行しました。 さらに日本とインドネシア、アジアを結ぶ存在であるインドネシア日系人の歴史と現在についてまとめた論文(「インドネシア日系人の歴史と現在」蘭信三編『帝国以後の人の移動 ポスト植民地主義とグローバリズムの交錯点』第3部「ポストコロニアリズムとグローバリズムの交錯点」第20章)を発表しました。 本年度の目標であった国際シンポジウムと国内シンポジウムで報告する機会にも恵まれ、研究成果を国内外の研究者の前で発表し、批判的コメントをもらうことができたのも大きな収穫でした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目で解析をし終えた文献資料と聞き取り調査の結果にもとづき、査読誌に論文を投稿し、掲載された。また当初の計画で目標としていた国際シンポジウムで報告する機会に恵まれ、研究成果を国内外の研究者の前で紹介し、批判的コメントをもらうことができた。その他、研究で得た知見をもとにシンポジウム報告、単著も刊行できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行中に、重要な先行研究が2つ刊行された。ひとつは千野境子(2013)『インドネシア9.30クーデターの謎を解く』草思社で、もうひとつは倉沢愛子(2014)『9・30世界を震憾させた日――インドネシア政変の真相と波紋』岩波現代全書である。同時代の国際関係を、外交文書を駆使して描いた前者と、ジャワだけでなくバリやカリマンタン、中国でもフィールドワークを行い、華僑・華人の虐殺体験を詳述した後者をみて、もっぱらジャワのプリブミを対象とした本研究課題の限界を知った。来年度は最終年度ということもあり、どこまでできるかわからないが、可能であればジャワ以外の社会文化的背景をもった地域や人々の体験にも目を配り、ジャワ、プリブミ中心に偏らない記述をするように心がけたいと考えている。
|
Research Products
(9 results)