2012 Fiscal Year Annual Research Report
膜内配列切断酵素SPPの基質認識メカニズム解明に向けた構造機能解析
Project/Area Number |
12J00097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新留 穏香 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 膜内配列切断プロテアーゼ / 膜蛋白質 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
膜内配列切断プロテアーゼ(Intramembrane cleaving proteases;I-CLiPs)ファミリー分子は、発生分化や脂質代謝調節など幅広い生命現象において重要な機能を担うとともに、その切断活性の異常は様々な病気の発症メカニズムと関連することが知られている。I-CLiPsは、その活性中心部位が脂質二重膜内に存在する親水性ボア構造に面することで、一見起こり得ない「疎水性環境における加水分解」を行っていることが明らかとなっている。しかし、もともと疎水性環境に存在する基質がどのようにI-CLiPsに認識され、どのように親水性環境へとリクルートされるのか、どのように切断されるか等、具体的な基質認識機構には迫れていない。本研究は、I-CLiPsファミリー分子の1つであるSPP(Signal Peptide Peptidase)をターゲットとし、その詳細な基質認識機構を構造生物学的手法と生化学的手法を組み合わせて明らかにすることを目的とする。本年度は、相互作用検出系の構築、哺乳類細胞を用いたタンパク質高発現株取得の系の構築など、構造解析および生化学的解析に向けた準備を行った。さらに申請者は、I-CLiPsファミリー分子の1つであるγ-secretaseの基質、SorLAを第二のターゲットとした。SorLAはγ-secretaseと同じくアルツハイマー病の発症に寄与すると報告されており、SorLAを対象とした研究はアルツハイマー病発症機構にもつながり得る。申請者は、SorLAの細胞外領域に位置するVps10pドメインと、アルツハイマー病発症の原因分子と考えられているアミロイドβ(Aβ)との結合を生化学的に解析した。野生型SorLA Vps10pドメインはAβと結合する一方、Vps10pドメイン内に家族性アルツハイマー病連鎖変異の1つG511Rを導入すると、Aβと結合できなくなることを見出した。この結果は、G511R変異はSorLAのAβ結合能を失わせ、Aβを分解系へと輸送できなくさせることでアルツハイマー病発症につながる変異である可能性を示すものである。本研究の成果は、The 11^<th> International Conference On Alzheimer's & Parkinson's Diseasesにて発表し、現在論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SPPの構造解析および生化学的解析に向けて系の構築を行うとともに、新規のターゲットSorLAの研究を進めている。申請者は採用一年目にしてSorLA内に同定されている家族性アルツハイマー病変異の構造的病因に迫る発見をし、国際学会での発表および論文執筆にまで至っているため、当初の計画以上に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った検討結果を基に、SPPのX線結晶構造解析を目指すとともに、生化学的手法を用いたSPPと基質との相互作用様式の理解を目指す。新規ターゲットとして進めているSorLAの研究に関しては、昨年度見出した家族性アルツハイマー病変異効果の結果を基に、変異が構造に与える影響の検討など構造学的観点から研究を進め、SorLAとアルツハイマー病の関連についての理解を深めていく。
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